Let's search for Tomorrow
「この度は無事のご帰国、おめでとうございます。」 数十分後にキムラスカ・ランバルディア王国に到着すると、港には体格のいい男性将校と、厳格そうな表情をした女性将校が立っていた。 「アルマンダイン伯爵より鳩が届きました。マルクトから和平の使者がご同行しているそうですが。」 もちろんです、とゴールドバークは大きく頷く。左側に控えていた、セシル少将に視線を向けて、城への案内を任せた。 「ちょっと待ってくれ。俺がイオン達を城へ連れて行く。そういう約束だったしな。」 ジェイドが名乗るとゴールドバーグ、セシルの表情が驚愕に変わる。 「…貴公があのジェイド・カーティス…。なるほど、マルクトも本気なわけですな。」 その通りだ、とゴールドバーグは頷いた。 「公爵家の使用人ガイ・セシルだな。公爵がお呼びだ、セシル少将と共に公爵家へ。」 ゴールドバーグの視線が鋭くに届いた。が反射的に肩をすくめるとイオンがすいて進み出てを庇う。 「彼女は僕がインゴベルト国王の御前でお話します。この場で名乗る事が出来ないのは不問にしていただけませんか。」 丁寧な言葉遣いだったが、相手に否定を許さなかった。大の大人が十代の少年のすごみに尻込みし、ゴールドバーグはイオンの言葉に従った。 「それではルーク。案内をお願いします。」
バチカルは王都とだけあって、街の大きさも、人口も、他と比べようがないほどだった。 「これに乗って、メインストリートに行くんだ。」 ガイが天空滑車を指差し、ルークに教える。ルークの後ろでジェイドガ物珍しそうに頷いた。浮かない表情のルークを気にしつつ、は天空滑車に乗り込んだ。 「…っち。自分の街に帰ってきたってーのに…全然帰ってきた気がしねぇ。」 ルークの小さな呟きを拾ってしまい、は気まずくなって俯いた。それを見たイオンが体調が悪いのか、と気を使ってくれたがは首を横に振るだけの返事にとどめた。 この先がキムラスカ・ランバルディア王国の誇る王宮だ、とガイが言い足す。目前に広々とした視界が開けた。眩しいばかりの太陽の光が降り注ぐ。 「んじゃ、俺は公爵に呼ばれてるみたいだから先に屋敷に戻るな。」 ガイはそういうと軽く右手を上げて、屋敷へ駆け出していった。ルークは生返事を返して、絢爛豪華な装飾が施された自身の家を見上げた。 「ルーク?」 ジェイドがルークを呼び、ようやく王宮へと足を向けた。 王宮の中はが想像していた通りの雰囲気で包まれていた。 ルークは慣れた様にその中央を歩く。続いてイオン、アニス、、ジェイド、ティアが歩いた。 「お、お待ち下さい!陛下は只今客人と謁見中でございます!」 なんとも横暴なやり方だ。は目を丸くしてその様子を伺う。 「しかし!」 クビ、といわれてその騎士は黙った。最初からそーすりゃいいんだ、とルークは悪態吐きながら謁見の間に入った。 「伯父上!モースの言葉は偽りだ!」 インゴベルトは玉座に座りルークを一目見て表情を和らげた。ルークと知らずに声を荒げたアルバインはもごもごと口動かして一歩下がった。 「インゴベルト六世陛下、ローレライ教団導師イオンであります。マルクト帝国ピオニー九世陛下に和平の使者にと請われ、親書をお持ちいたしました。」 導師イオン…とモースが呟いた。アニスが鋭い視線をモースに向ける。 「うむ、確かに親書は受け取った。よく参られた、さぞお疲れの事であろう、客間へ案内しますぞ。」 む、とインゴベルトは眉をしかめ、イオンはの手を引いて自身の横に並ばせた。 「導師イオン!よもや、その娘…!」 イオンはが身分の高い人間のように紹介する。現実世界では確かにそこそこの身分にはいたが、それは自身がではなく、両親が築き上げた地位だ。 「…して、その異世界から参った娘、どうしたか?」 インゴベルトは異世界、と聞いて驚いたようだったがそのそぶりをあまり見せずに尋ねた。 「恐れながら陛下。二千年前…譜術戦争末期に現れた天才譜術士『ユリア・ジュエ』は周知の事と存じます。ユリアは大譜歌により『ローレライ』と契約し、預言を残した。その預言の中にはローレライ教団の上層部の者しか知らない『秘預言』というものが存在します。」 モースが説明したのをついで、イオンは一度言葉を切り、再び話し始めた。謁見の間に居る全員がシンとし、イオンとを交互に見据える。 「『ND2018 最後の一文を聞いた全員がを見据えた。その表情はどれも驚愕に満ちていた。 「な、なんと…!ではその娘が『ユリア・ジュエ』の生まれ変わりというか!」 インゴベルトの言葉に頷き、イオンが一礼し一歩下がると、だけがその場に残された。 「わ、私そのような人間ではありません!」 謁見の間からどうやって客間に移ったのかはよく覚えていない。イオン、モース、インゴベルトの言葉が頭の中でぐるぐるしていて激しいジェットコースターを乗った後のように気持ち悪かった。ベットの上に気だるい四肢を投げ出し、真っ白い天井を呆然と見上げているうちにの意識は夢の中へと落ちていった。
アトガキ。 約一ヶ月ぶりの更新…_| ̄|○スイマセン…
|