Let's search for Tomorrow
流通拠点の街・ケセドニア。 「此処はキムラスカ、マルクトとは違って自治区ですからね。皆が自分の行いは自分で対処します。なので国家間の政治争いに巻き込まれないのでしょう。」 思った事をイオンに告げるとイオンはそう答えた。なるほど、とは思う。 「あーあ…せっかくヴァン師匠と旅が出来ると思ったのに。」 不平をもらしたルークを宥めつつ、ガイは苦笑した。ヴァンとはマルクト領事館前で別れた。アリエッタをダアトの監査官に引渡し、しかるべき処罰を受けさせる為だ。 「あーら、こんな場所ではめったに見かけない素敵なお方。」 先を行くルークに女性が声をかけた。豊満な胸、くびれた腰、ほっそりとした四肢、そして少し高めの猫撫で声。なんとも魅力的だが…。 「あーん!アニスのルーク様が年増にぃぃ〜!!」 女性はルークから身体を離し、その場を去ろうと動くと、ティアがその行く手を阻む。 「待って!今盗った物を返しなさい。」 女性は叫ぶと仲間の名を呼び、ルークの財布を空中に投げた。それを受け取った男―――ヨークは女性と一緒に逃げる男―――ウルシーとは別の方向へ駆け出したが、ティアの小型ナイフがヨークのズボンと地面を縫いつけた。 「…っ!」 ティアは冷めた目で淡々とヨークにいう。小型ナイフは未だヨークの首筋に向けて。ゆっくりとした動作でヨークが財布を返すとティアはナイフを仕舞う。その隙にヨークは全速力で駆け出した。 「はわ〜。」 とアニスがティアに対し感嘆の声を上げた。 「この『漆黒の翼』に楯突こうなんていい度胸だ!覚えておくんだなっ!」 上空から声がしてが振り向いた時はすでに三人の姿は無かった。 「ご準備が整いますまで、街を観光なさったらいかがですか?」 領事が言うと、ガイはそれに頷いてルークに許可を求めた。 「いいんじゃねぇか?」 来た道を引き返し、国境に立てられた豪邸を目の前に、は開いた口が塞がらなかった。自身の家もなかなか大きいが、これほどではない。 「…アラビアンナイトな感じ。」 宮殿の離れの一室を思わせる屋敷には素直な感想を述べた。風が砂を巻上げ、空中を舞う。砂に含まれた鉱物が反射してキラリと光り、より幻想的に見せた。 「これはこれはイオン様、そして皆様。ようこそいらっしゃいまし。この度はどのようなご用件で?」 アスターは二回手を叩いて、使用人を呼びつけると音譜盤の解析に取り掛からせた。はその光景を見て忍び笑いを漏らす。アスターの行動が、父親にそっくりだったのだ。 「丁度良い暇つぶしが出来たな。船の上で読もう。」 ガイは嬉しそうに懐に挟んだ時だった。 「ガイ!大丈夫?!」 再びガイ目掛けて走りこんできたシンクをはとっさに砂を吹っかけた。仮面をしているとはいえ、思わぬ反撃にシンクは一瞬怯む。 「!逃げますよ!!」 ジェイドがの左手を握り、走り出す。イオンとアニスが先に船に乗り込んでいた。ジェイド、、ティア、ガイが続き、最後にルークがミュウを掴んだまま船に飛び乗ると船は汽笛を三回鳴らして港を離れた。 船は無事に出航し、キムラスカ=ランバルディア王国首都・バチカルに航路を取る。心持少し早めのスピードで進む船は大きく白波を立てた。 「ガイ、傷は大丈夫ですか…?」 イオンの心配を拭うように歯を見せてガイは笑って見せた。服に切り傷がついているが、身体への傷は無い。イオンは胸を撫で下ろした。ガイはに向かって有難う、と言う。顔に熱が上るのをは感じた。 「は武術か何かやっていたのですか?」 アニスが瞳を輝かせての傍に駆け寄る。こういう時のアニスは何か儲け話では無いかと予測しているに違いない。は苦笑して先手を打った。 「剣道はお金に関係ないわよ。」 笑い声が船室を満たした。が簡単に剣道の説明をする。それを聞いて、が少しは剣術を心得ていると判断したジェイドが荷物の中から短剣を渡した。 「ひとまず、それで。私達はイオン様とあなたに危害が無いよう戦って来ましたが、今後危険が及ばないとも限らない。万が一の場合、あなたにも戦ってもらわねばなりませんのでお渡ししますよ。」 手の中の短剣を見て、は有難うございます、と応えた。どうやら、少しは信用してもらえたみたいだ。 そして、話は資料に移る。 「"ローレライ"?」 総称には名前もある、とガイはアニスに続けて言う。ルークはあまり興味なさそうにしていたが、はへぇ、と頷いた。 「"ローレライ"はまだ観測されていません。いるのではないか、という仮説なんです。」 仮説、と聞いてははっとした。コーラル城であの音機関を起動された時、"声"は確かにローレライといわなかったか…? 「?どうかしましたか?」 こちらの世界の事は知らなさ過ぎる。確証も無いまま発言したところで、謎が深まるばかりだ。 「同位体がそこら中に存在していたら、あちこちで超振動が起こって大変でしょうね。…同位体研究は兵器に転用できるという事で、軍部は注目していますが…。」 ガイがわかりやすい例えを出したおかげで、もフォミクリーという技術が大体予想つけることが出来た。現実世界で言うクローンの事だろう。 「フォミクリーで造るレプリカは只の模造品ですよ。姿形は一緒ですが音素振動数は変わってしまい、同位体を造る事など…出来ません。」 はルークの意見に賛同した。今聞いた事を一度整理しないと、沢山の情報に脳が破裂しそうだ。 「大変です!船後方、ケセドニア方面より多数の魔物と正体不明の譜業反応を確認しました!」 一同に緊張が走った。
*20060218*
アトガキ。 まだバチカルにつけません…_| ̄|○
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