Let's search for Tomorrow
翌朝、目を覚ましたの第一声はけたたましい悲鳴だった。 「何事ですか?!」 次々出てくる罵声にルークは誤解だっ!と怒鳴った。それを見て、はぱちりと目を瞬かせる。痺れているような不思議な感覚を右手に受け、視線を向けるとその先にはルークの服を掴んでいる自身の手。 「ご、ごめんなさいっ!」 の謝罪によって、ルークは無実となった。 「これはこれはルーク様、おはようございます。よく眠れましたかな?…お久しゅうございます。大きくなられましたなぁ。」 アルマンダインはにこやかに話し始める。ルークの頭にクエスチョンマークが飛んだ。覚えてねぇ、とルークが呟く。アルマンダインの表情が少し寂しそうに見えたが、お小さい頃でしたから、仕方ありませんね。と結論づけた。 「…ところで、叔父上に伝書鳩頼めるか?」 アルマンダインは目を見開いてジェイドを見据える。ルークが言った一言で部屋の中は緊張が走った。は思わず生唾を飲む。 船の修理も完了し、ルーク達はいそいそとそれに乗り込む。だけが乗船するのを渋った。 「どうかしたのか、…?」 なんだ、そんなことか。とガイは笑った。 「確かに、キミは身分証明するものが無い。正直未だ警戒はしている…。けどここにいても仕方がないし、バチカルなら何か帰る方法が見つかるかもしれないだろ?」 の背後からガイに賛同する声があった。はびくりと肩を揺らしてその声の持ち主を確認する。頭は再び危険信号を発するが身体がすくんでしまっていた。 「あ、はい。で構いません…グランツ…さん。」 は首を縦に振るのが精一杯だった。 「おーい!師匠、ガイ、!早く乗れよ!」 ひょこりと甲板から顔を出したルークが三人を呼んだ。ガイが返事をし、階段を上る。ヴァンがをエスコートして乗船した。 乗船して直ぐ、自由行動となった。ただは…、とジェイドが言葉を濁した。ジェイドもを少し警戒している。ヴァンが話を聞きたいと言う事でと一緒に行動する事に納得し、船室へ入っていった。暗い表情を見越してか、ヴァンはにこやかにを甲板へ出るように勧め、白波をあげる海へ視線を移した。 『正直、まだ警戒はしている―――。』 「どうした、船酔いでもしたか?」 ヴァンが顔を覗き込んでの様子を伺う。いえ、大丈夫ですと応えては押し黙った。 「先程のガイの言葉か?」 はビックリしてヴァンを見上げた。やはりそうか、とヴァンは笑っての肩に手を置いた。 「君の現状ははっきり言って微妙だ。しかしの出現は詠まれていたんだ…私は知っている。君はこの世界に必要だから、異世界から飛ばされてきたのだよ。」 そうだ、とヴァンは頷く。 「しばらく君は辛い目に合うかも知れない。しかし、の存在を世界は認めざるを得なくなってくるのだ。」 はヴァンの瞳を見つめていた。最大の警告音を発しているが、瞳をそらす事が出来なかった。二人が押し黙った時間が果てしなく感じられたが、異常な気配には気を尖らせた。 「どうした?」 二人は反対の甲板へ移動した。そこで、船の一部が消失しているのを発見し、その先にルークが力を暴走させていた。 「ルーク!」 ヴァンはすぐさまルークの元へ駆け寄り落ち着くように指示を出す。ゆっくり、ゆっくりと呼吸を整えるように促すと、力の暴走は収まった。 「大丈夫?」 超振動…?とルークとは繰り返した。 「ルークがタタル渓谷に飛ばされた時の物ですか?」 え…、とルークは言葉を濁らせた。ルークからへとヴァンは視線を移す。見据えられては生唾を飲み込んだ。 「、君ならわかるかい?」 は思った事を素直に告白した。驚愕の表情でルークがを凝然と見ている。あくまで、これは憶測だった。が知っている情報は七年前にルークがマルクト帝国によって誘拐された事、記憶を失っている事、ルークが第七音素譜術士である事。そして、こちらの世界にやってきて両国の状況から考えると、ルークは戦力として戦争で使用されるのでは、という結論に至った。 「その通りだ。ルークの父親、そして陛下共にその力を利用しようとルークを軟禁していた。お前には、超振動を一人で起こせるという特技がある。」 落ちつけ、ルーク。とヴァンはルークの肩に手を乗せた。 「何の為に導師イオンと、マルクト帝国軍人が親書を持っているのだ?戦争を回避する為だろう?二人が無事に陛下に謁見し、開戦することが無ければ、少なくとも理不尽な軟禁からは解放されるだろう。それに、もいる。」 …が?ルークはヴァンの視線がに移るのを追いかけた。二人に見据えられてはどきりとする。 「わ、私?」 ヴァンは大きく頷く。逆に、は何故か危険を感じた。何故預言と言われるだけで、皆信じてしまうのだろう。あまりにも依存しすぎているのではないか。そう思ったとたん、この世界が恐怖に感じられた。また、ルークがヴァンを信頼している事はよく解っているつもりだったが目の当たりにして、慄いた。 「自分を信じろルーク。超振動という力が、お前を英雄にしてくれる。」 ヴァンの言葉をルークは鸚鵡返しした。
*20060207*
アトガキ。 漸くケセドニアに着きました〜。
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