Let's search for Tomorrow

 

 

 

 

 

 

 大広間の奥の部屋の隠し扉をくぐって、四人は再び音機関の前にいた。
 ルークは依然として目覚めない。六神将が何をしたいのかもわからず、は安易に行動を起こせなかった。

 「さて、お嬢さんから始めましょうか。」

 ディストの言葉に逆らうことが出来ず、は言われるまま装置の中央に身を横たえた。
 ヴィンと起動する音が聞こえて、光が満たされ、の視界は白一色になった。

 『我――に―――よ。――声に応――。』
 (誰?)

 脳に直接語りかけるように、声が木霊した。しかし、フィルター越しのように声がはっきりしない。

 『我――ーレライ。ユリ――鍵―――て離――。』
 (ま、待って!)

 の声も虚しく、声は聞こえなくなった。同時に光が消え、ディストがもういいですよと声をかける。頭の中に白い靄がかかった様に、身体全体に気だるさを感じた。
 装置の中央でのろのろと動くを見かねて、シンクは舌打ちしライガと共に装置の中にはいった。ルークを引き摺り下ろし、今度はをライガにまたがせると外へと追い出す。ルークを横たえ終わるとシンクも外に出て、様子を見守った。

 「おい、情報を引き出すとこうなるのか?」
 「まぁ、一時的なものですがね。被験者には多大な負荷がかかりますから。最悪死に至ります。しかし、彼女ならその心配はありませんよ。何しろ、ローレライの加護を受けているとか。本当かどうかは知りませんがね。」

 ディストは肩をすくめて両手を肩の高さにまで上げた。
 ルークが装置の中に入って数分。はただその光景をぼんやりと眺めていた。そこへ割ってはいる声。

 「ルーク!!」
 「…チッ。」
 「シンク、終わりましたよ!」
 「遅ぇんだよっ!ったく、さっさとしやがれオッサン!」
 「ムキーーーーっ!誰がオッサンですか!誰が!!…ふんっ、まぁいい。後で覚えておきなさい!」

 シンクはライガの上に未だ乗っているをその場に下ろし、ディストから音譜盤を受け取り懐に入れた。ライガとディストは既に姿を消している。シンクはもう一度舌打ちして、あのオッサン…!と悪態吐くと身を翻して逃走を図った。

 「待ちやがれッ!」

 ガイはシンクに向かって切りかかる。正面から切りかかってきたのを右にひらりとかわすと、左下から右上にかけての払い攻撃を腕に仕込んでいた短刀で受け、相殺する。だが、最後に力押しされシンクの仮面が飛んだ。

 「っ?!」
 「…チッ、」
 「…。」

 シンクは身を翻して仮面を拾い、再びつけた。ガイはその下の顔を目撃し声を失っている。近くにいたもシンクの顔を見た。誰かに似ていると思った。

 「ルーク!っ!大丈夫?!」
 「…此処は見逃してやるよ!」

 後から来たジェイド達をみて、シンクは姿を消した。ガイの手には先程の音譜版。ティアはルークの下へ。アニスはの意識を確認している。

 「…この症状は…!」
 「う…、なんか知ってるんだな、ジェイド…。」
 「あなたは何をされたのですか、ルーク。」
 「し、るかよ…ただフォンスロットを開いた、とか言ってはいたけど。」
 「に行われた事を見ましたか?」
 「…見ていない。」

 そうですか、とジェイドはいって押し黙る。
 は意識はあるものの反応が鈍い。この現象はアレによく似ていた。

 (連中はなぜがいることを知っていた?突然現れたこの少女のことを…。)
 「詮索は後にしましょうか。整備隊長を助け出さないと、出港出来ませんしね。なるべくから目を離さないようにしてください。」

 というわけでガイ、をおぶってやりなさい、とジェイドは爆弾を投下して先に屋上へ続く階段を上り始めた。

 「そりゃないぜ〜!俺が苦手なの、知ってるだろ?!」
 「なさけないな〜ガイ!男なら腹括ろっ!」
 「こ、これだけは、ほ、本当に勘弁してくれ〜っ!」

 少しだけ、空気が和んだ。
 結局ガイは無理やりをおわされて膝ががくがくいっている。あまりのみっともなさにルークがからかう。は静かにガイの背中にいた。
 屋上ではアリエッタ、整備隊長、魔物が二匹待っていた。ガイはゆっくりとを下ろし、イオンに任せた。
 説得を試みたものの、アリエッタは応じず、否応無く戦闘になった。は依然としてぼんやりしており、イオンが名前を呼び続けていた。

 「……。ユリアは一体どこまで預言を…。」

 アリエッタの膝が地面につく。魔物も力尽き、地面に横たわった。その時、やはりここか、と男が現れた。

 「ヴァン師匠!」

 ヴァン・グランツが眉を寄せる。ルークが師匠と呼ぶのに応え、イオンへと向き直る。

 「カイツールへ向かったら導師達は着ていないといわれ、心配しましたぞ。」
 「ヴァン…すいません。どうしても彼を助けたくて…。」
 「大事にいたら無かった様でなにより。時に、私の部下が失礼したようで…。アリエッタの事は私が責任を持ちます。…ところで、その少女は?」

 ヴァンがイオンの傍でぐったりしている少女を見据える。一瞬瞳が輝いたように見えた。

 「彼女はといって、信じ難い話ですが異世界から来たようなんです。先程、ルークと共に攫われ、助けに行ったときにはこのような状態に…。」
 「ふむ…。目立った外傷は無いな…。何をされたかが解らない以上、無闇に手出しは出来ん。回復を待つしかないだろう。とにかく休める場所へ急ぎましょう。下に馬車をつけております。どうぞそちらへ。―――ルークッ!」
 「はいっ師匠!」
 「彼女を頼む。私はアリエッタを運ばねばならん。」

 えー、かったりぃ。と不平をもらすルークにヴァンは破顔して一言いう。

 「これも修行だ。」

 誰が一番に噴出したか解らないが、笑い声が屋上に響いた。
 ちぇ、とルークは舌打ちした。鈍い光を放つの瞳を見て思わず薄気味悪ぃ、と胸中でごちる。左手を背中に、右手を膝裏で支えて横抱きした。
 想像していたよりも軽いに思わず目を瞬いた。筋肉のつき方、身体の大きさ。全てがルーク自身と違う事に一瞬戸惑いを感じたが、ジェイドに、鼻の下が伸びてますよとからかわれ、顔が紅潮するのを打ち消すように頭を振って歩き出したヴァンの後を追う。
 の左手が、ルークの服をきゅ、と掴んだ。それに気付いて、ルークはに視線を落とす。今では瞼が閉じられていて寝ているように見えるが、かすかに動く口元が再びルークの顔に熱を出させた。

 「あ、…りが、と…。」

 

*

 

 カイツールの軍港に着くと、船の修理は機関部を残すのみと、急ピッチで進められていた。助け出された整備隊長は仲間に迎え入れられ、少し休んでからすぐに作業に戻ると言って、作業場へ走り去った。

 「出向は明日になるだろう。少女も休ませねばならんし、簡易施設だが、ゆっくりなさい。」

 ヴァンはアリエッタを連れてその場を離れた。

 「ルーク、を休ませてあげましょう。」
 「あ、あぁ…。」

 ティアが最初に簡易施設に入り、ルークもそれに続く。ベットにを横たわらせ、離れようとして異変に気付いた。

 「ぷぷっ、ったらアニスのルーク様の事、気に入っちゃったみたい〜。」
 「誰が、誰のだ!…っち、うぜぇ。」
 「それにしてはまんざらでもなさそうだぜ、ルーク坊ちゃん。」
 「ルークに春ですか…?なんとも薄気味悪いですね。」
 「? 春はまだ当分先だろ?何言ってるんだ、ジェイド。」

 ルークの言葉に、全員肩を落として息を吐いた。

 「…これだからお坊ちゃんは…。ま、ルークなら大丈夫でしょう。」

 やれやれ、とジェイドが肩をすくめて部屋を出て行った。何がだ、とジェイドに向けたが、にやりと笑みを返されただけだった。ガイとアニスが声を上げて笑い、イオンは苦笑、ティアは少し顔を赤らめて、大佐のばか、と呟いた。

 「お、おい!どうするんだよ、これ!」
 「そのまま付いていてあげなさい。も、どこかルークを気にしていた節があったし…。」
 「ルーク様!私がいるからには手を出さないでね。」
 「モテモテだな、ルークっ!ナタリア様にこの事進言しといてやるから、安心しろ。」

 逆だろー?!とルークが叫ぶのを笑って、ティア、アニス、ガイも部屋を出て行った。イオンは苦笑しただけで、アニスに連れられて一緒に出て行った。

 「お、父様…おか…様…。」

 ルーク、ミュウとだけになった部屋に、の寝言が木霊した。未だにぎゅっときつくルークの服の裾を握り締めている。
 ルークはの声に、はっとして、渋々床に腰を下ろした。無理やりの手を放すか、上着を脱げばいいだけの話なのに、どうしてこんなに気になるのだろうか…。

 「なんで、懐かしいって思うんだろう…。」
 「みゅぅぅぅ…。」

 隣のベットから掛け布団を引っ張って身体に巻きつけると、ルークはが横たわるベットにもたれたまま、いつの間にか眠りについた。

 

 

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*20060204*

 

 

 

 

 

 

アトガキ。

難産パート2でございます(汗
とりあえず、ルクたんに姫抱っこさせてみました(ぉ)そして、ルクたんはかなりの奥手…純愛を目指したいですね(笑)
ヒロインも恋愛経験は皆無に等しいので(ぉ)きっと、周りで見ているほうがイライラさせられそうな二人になりそうです(笑
妄想の赴くままに書き綴ったので、文章が支離滅裂です…。精進します。