Let's search for Tomorrow

 

 

 

 

 

 森を抜ければ、コーラル城はすぐだった。
 しかし、手入れのされていない街道は雑草が多い茂っており、進むのに困難を要した。帯刀していたガイが一番を先を進み、飛び出している蔓や木々の枝を薙ぎ払った。その後をジェイドが歩きやすいようにと踏み倒し、ルーク、イオン、アニス、、そしてティアが続いた。
 道中、魔物と遭遇すると、否応なく戦闘になる。、一歩進むことには神経を尖らし、コーラル城についたときには精神的に疲れていた。

 「ようやく着いたな。」
 「はぁ…疲れたー。」

 ルークの言葉には心の中で大きく賛同した。

 「、大丈夫ですか?」
 「あ、はい。イオン様もお体大事ありませんか?」

 突然声をかけられ、は身体を震わせたが、イオンからの労いにほっとする。イオンはクスクスと笑った。

 「大丈夫です。…僕は、確かに周りのものから立場上敬意をはらった呼ばれ方をしていますが、にその必要はありませんよ。どうか、イオンと呼んでください。」

 も破顔して頷いた。

 コーラル城を目前にして、は息を飲んだ。
 ファブレ公爵家が、此処を手放して何年になるのか。それは解らないが、此処を建造した技術士はそれは腕のいい人だったのだろう。
 壁や、柱には苔や雑草が多い茂っていてみすぼらしいが、貫禄のある出で立ちに建設された当時に思いを馳せた。それはもう、素晴らしい城だったに違いない。
 手入れの行き届いた庭、鮮やかな赤い絨毯、豪華絢爛なシャンデリア。
 はふと、現実の自身の家と重ねた。

 「おーい行くぞ!」

 ルークが立ち止まっていたイオンとに声をかける。はい、と返事して小走りで追いかけた。
 何年も使われていないはずの城に、明らかに残る人が立ち入った後。アリエッタ、整備隊長だけのものではない。

 「どうだ、ルーク。何か思い出したか?」
 「うー…ん。…だめだっ、なーんも思い出せねぇ。」

 コーラル城の大広間で、ルークとガイの会話を静かに聞きはそうだ、と思い返す。
 七年前に誘拐されたルーク。その時のショックで記憶障害を発症していると言うが…。とはまた別の意味で、ルークも可哀想だ。身を守るとはいえ、屋敷の外に一歩も出させない生活などと。
 難しい表情をしていたのか、とアニスに呼ばれ、地面に落としていた視線を上げるとみんなは奥の部屋へ入ろうとしていた。

 乱れた書斎の奥の隠し扉を開けると、さらに奥に続いていた。ちらりと見えた魔物の尾。誘導しているのか、また挑発しているのか…真意は解らないが今までの部屋に整備隊長がいなかったことから進むしかなかった。

 「これは…!」
 「なんだぁ?!こんな音機関、別荘にあったのかよ?!」

 扉をくぐって、階段を下りるとそこには大きな装置が我が物顔で設置されていた。はその音機関を見上げる。隣でジェイドも同じように見上げていて、息を吐いたのを聞いた。

 「どうかしたのですか?」
 「え、いえ…なんでもありませんよ。と、言いますか、は知らないのですか?」
 「…それは此処で言っても?」
 「いえ、やめておきましょう。」

 は小さく息を吐いた。あまり詳しく知っているわけではないので、後々ジェイドから話される事を願った。ジェイドは何を考えているのか、押し黙って音機関を見上げていた。

 「うわあああぁっ!」
 「?!」

 悲鳴が鼓膜を叩いて、は音機関から音源へと視線を移した。武器も持っていないというのに、身についた習性のせいか、身構えた。ジェイドがほぅと頷き、ティアも目を丸くする。

 「いたたたた、」
 「す、すまない!大丈夫かアニス。」
 「あー、そういえばお前女嫌いだったもんな。」

 は身体の力を抜いて、アニスに手を貸した。依然としてガイは数歩離れたところで震えている。なんとも滑稽な絵面だ。ルークが忘れてた、といわんばかりに補足した説明にガイは辛うじて、女性恐怖症なんだ!と訂正した。

 「それにしても、異常なまでの怖がりようですね。」
 「…それで自己紹介のとき、はガイだけ握手を求めなかったのね…。」
 「あ、うん…。早く治るといいね。」

 ジェイドの眼鏡の奥の瞳が光を灯した。前半の答えはティアに、後半はガイに向けて言うと、苦笑した笑みが帰ってきた。はもう一度音機関を見上げる。

 「一朝一夕で治るものでもありませんし、先を急ぎましょうか。」
 「ま、待てよジェイド。この装置に心当たりあるみたいだけど、何なんのか教えろよっ!」
 「…少し待ってください、確信がもてたら、私から話します。」
 「めずらしいなぁ、旦那がそんな事言うなんて。」

 何かと話題についていけないルークがジェイドに吠えた。ジェイドは憶測で話したくない、といって、先を進む。そんな態度にガイ、イオン、アニスは珍しい、と口を揃えた。
 廊下を歩く度響く足音に、は少しの強迫観念を覚えた。
 ―――自分は何に焦りを覚えているのだろう。背中を冷たい汗が流れた気がした。

 階段を上り詰めて、屋上が近づいてくると、ルークの足が速くなった。逆に、は息が荒い。体力には自信があったが、日頃あまり階段を使っていない事を思い出し、自嘲した。

 「―――屋上だ!」

 ルークが弾んだ声を上げて、階段を一気に駆け上がる。アニス、イオンがそれに続き、苦笑してジェイド、ガイも続いた。

 「、辛そうね。」
 「さん大丈夫ですの?」
 「大丈夫…。あと少しだし…。」

 ティアとミュウがに付き添い、屋上へ着いた時にはルークとアニスが魔物にさらわれ、空を旋回している時だった。

 「ルークッ!アニスッ!」

 イオンを庇うように、ガイが前へ出てアリエッタと対峙する。が乱れた息を整える暇も無くイオンの元へ駆け寄ろうとした時、突如浮遊感が襲った。

 「〜っ!痛ったぁっい!根暗ッタ、何するのよっ!」
 「アリエッタ、根暗じゃないもんっ!」
 「さんがつかまっちゃったですの!」
 「「「?!」」」

 は自身に何が起こったのか、まったく把握できていなかった。ただ、全身に風を感じて、地面が遠くに見えた。隣でルークが小さなうめき声を上げている。大きな鍵爪がルークを掴んでおり、同じくも掴んでいた。魔物は挑発するようにみんながいる屋上を二度旋回し、コーラル城の入り口へと向かう。
 あまりのスピードには目をつぶった。そうでもしていないと意識を手放してしまいそうだった。
 魔物がばさばさとゆっくりと翼を動かし、地面にルークとを投げ出した。痛、とはうめくが、ルークの反応は無い。気を失っているようだった。特に外傷が無いことにほっとして胸を撫で下ろしたのも束の間。アリエッタとは別の六神将がの目の前に立っていた。

 「おや、情けないですねぇ。数度空を旋回しただけで気を失うとは。」
 「御託はいいから。気を失っているのならそっちの方が好都合だ。時間もないしさっさとしないと奴らが来るよ。」
 (シンク、とディスト…だよね…どうして此処に…?)
 「…それにしても、言ったとおりになっているなんてな。」
 「それこそ御託になるのでは?私にすればとても興味深いですが。…さて、お嬢さんご同行お願いしますよ。」

 シンクは気を失ったルークを持ち上げ、ライガの背中に乗せると先に中へ入っていった。残されたは逃げ出すわけにも行かず、おとなしくディストについて、中へ入った。

 

 

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*20060202*

 

 

 

 

 

 

 

アトガキ。

難産でした…。そして、一回で終わらすつもりのコーラル城が結局二回に…_| ̄|○
でもま、いいんです…サフィールとも接触できたしvv
話の都合上、今は戦闘シーンを大きく割愛させて頂いておりますが今後出てきますのでお楽しみに(何