Let's search for Tomorrow
風に揺すられ木々の葉が音を立てた。小鳥の囀りも聞こえる。 「な、何故、」 の問いに答える者はいない。身の危険に、頭は逃げろと命令するが、腰が抜けてその場に座り込んだ。その間にも、魔物は距離を詰め、そして、跳躍した。 「きゃぁあっ!!」 怒鳴るような声がし、強い力で地面に押し付けられた。空を切る音が耳鳴りのように聞こえる。は眼をきつく閉じて、早く恐怖が過ぎ去るのを待った。 「―――っ!!」 いつの間にか、頭の上の強い力は除かれていた。必死に握り締めていた手に爪の跡が残り少し血が出ていた。 「た、助けていただいて有難うございます、」 はなんとかそれだけを口にした。初めて体験した恐怖に身体の震えが収まらない。 「あなたはどうしてこんな場所にいるのですか?…見たところ旅をしているようではないですし。普通は丸腰で外を出歩いたりはしませんよ?」 背中に人形を背負った少女は確か、アニス・タトリンだ。そうでない事を切に願ったが、アニス、と深緑の髪の少年に少女が諫められ、期待は裏切られた。 先を急ぐ、と言うことで歩き出した。その場にを残してはおけないとイオンが進言して、一緒にコーラル城を目指している。森を抜けたところで大佐―――ジェイド・カーティスが口を開いた。 「さて、あなたからお話を伺いましょうか。」 ガイ・セシルが苦笑した。は視線が自身に集中している事に居心地の悪さを感じたがいつまでもそう感じていてはいけなかった。ここにいる者達しか、"この世界"の知り合いは居らず、また、居場所もないのだから。 「私は、といいます。…・、そういった方があなた達にとっては聞きなれていると思います。…すぐに信じて頂けないお話だと思いますが、私はこの世界の人間ではないと思います、」 その考えに至るまで、時間はかからなかった。いくら否定したところで、"元の世界"に戻れる方法は今のところわからないのだ。それならば、早く開き直って生きる手立てを探す方がいい。その為には、彼らの力が必要だった。 「やはり…。」 言いよどむイオンに代わってそれで、と興味なさそうにルーク・フォン・ファブレが続きを促した。 「私自身、どうしてここにいるのか解りません。ただ、呼ばれた気がしました。」 イオンがはっとした表情をつくった。ジェイドはそれを見てくいと眼鏡を上げる。 「"呼ばれた"、ですか。誰に?」 鍵、と聞いてルーク以外の全員が顔を見合わせた。すっかり蚊帳の外にされたルークの機嫌がますます悪くなる。 「なんだよ、じろじろ人の顔見やがって。」 全員がはっとしてを見据えた。 「ど、どうして俺の名前…。」 呼ばれたルークが驚いた表情をした。名乗っていないのに、と呟いた声が聞こえ、は漸く自身の失態に気がついた。慌てて口元を覆っても後の祭り。 「え?!え?!今のどういうこと?!どうしてさんルーク様の名前知ってるのぉ?!」 にこりと微笑んだジェイドの笑みがこの時だけは恐怖だった。
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「…なるほど、そういうことですか。では、あなたは最初から我々が何者か知っていた…ということですね。何か未だ隠していそうな感じが否めませんが、」 ジェイドに見据えられては苦笑するしかなかった。さすが軍人、と賞賛したいほどの感の鋭さ。確かには一つだけ嘘を吐いた。この世界の事を"本"の中の世界にしたのだ。 「アニスちゃんびっくり〜!そんなことって本当にあるんだねっ!」 アニスは表情を輝かせて言うと、ティアも頷いた。ひとまずは納得したがジェイドと同じように未だ少し警戒心を見せるガイ。ミュウは純粋に嬉しいのだろう。(本当にしゃべっているのを目の当たりにして、はあまりの可愛さに意識が飛びそうになったのを明記しておく。)未来を知りたがったルークには申し訳ないが、は本当に此処までしか知らない。…ある程度のあらすじなら知っているが…それを言えば、この世界の何かが変わってしまう恐れがあり、は不用意な発言が出来なかった。 「イオン様、先程から深刻な顔をなされてますが、どうかしましたか?」 イオンの様子も気になるが、とりあえず、自身の状況を受け入れて貰えたという事に胸を撫で下ろした。
*20060125*
アトガキ。 ブログを見て下さっている方はもうご存知かと思いますが、えりゅはティアが好きくありません。 加筆訂正致しました。
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