WIND
ナルト、サスケ、、サクラの四人はいつもの様に指定された場所でカカシを待っていた。相変わらずカカシは指定した時間に来ないので、いっその事も遅れて来ようかと思ったがそれは真面目に集合しているナルト達に悪いと思い、待ち合わせ時間より五分早めに来て本を広げた。 「やー、諸君。おまたせ。今日は人生と言う道に迷ってな、」 ナルトとサクラがずびしっ、とカカシを指差した。待ち人がようやく来て、は本をポシェットに戻した。 「あー、まぁ、今日は任務じゃないんだ。―――がっかりするなよ、ナルト。その代わりお前達が喜びそうな話を持ってきた。お前達、四人を中忍選抜試験に推薦した!」 えーっ、と口を尖らせたナルトは、志願書を見せられて態度を一変させカカシに抱きついた。はその様子を見つめ、そのをサスケが見据え、そのサスケをサクラが見つめていた。こっそりとサクラは息を吐く。サスケの視線の先にはいつも、が居る。 翌日の午後、は忍者学校の前でナルト、サスケ、サクラと合流した。サクラの表情は冴えず、まだ悩んでいるようだ。サスケはサクラの様子に気づきながらも何も言わずに行こう、とナルト、、サクラを促して一番に忍者学校の門をくぐった。 「お、お願いですから、そこを通してください。―――きゃあっ!」 何を言ってるんだ、と他の受験者から声が上がったが、はそっちの方が何を言ってるんだ!と声を上げそうになるのをこらえた。――おかしい、どうしてこんなにムカムカするんだろう。気持ちを落ち着けるようにはお腹のあたりを軽くさすった。そうすれば高ぶった感情が和らぐと、教えてくれたのは養父のザイチだ。 「サクラ!お前はとっくに気が付いてるんじゃないのか?この班の中でお前の分析力と幻術のノウハウは一番だからな。」 サクラははっと顔を上げて不敵に笑みを浮かべた。 「――そうね、私は三階に用が有るの。此処は二階じゃない!」 幻術の掛けられた扉の前にいた二人のうち、背にクナイを背負った少年が蹴り上げてきた。それに素早く反応し、サスケも同じように足を上げる。その間へ何かがよぎったかと思うと、先ほど、クナイを背負った少年とは別の少年に殴られた、見覚えのある忍服を纏う少年が二人の足を素手で受け止めていた。 「おい、目立ちたくないと言ったのはお前じゃなかったのか?」 全てを見透かすような瞳を持った長髪の少年が先ほどサスケとクナイを背負った少年の間に割り込んだ彼に言うと、彼はの隣、サクラを見てぽっ、と頬を染めた。それを見たおだんご頭の少女が肩をすくめて首を左右に振る。 「僕はロック・リーといいます。あなたはサクラさんですよね。僕とお付き合いしてください!死ぬまであなたを守ります!」 だって眉毛濃いし、と呟いたサクラの言葉に、も心の中で大きく頷いた。いくら自慢の愛弟子でもさすがに眉毛までは真似させたくない。 「さんってあなたのことですよね。先生がよくあなたの事をぼやいていました。先生によるとあなたの体術はガイ先生に引けをとらないとか…是非僕達の班に入れたかった、とか。」 何を吹き込んでるんだ、あの青春バカっ!とは引きつり笑いを浮かべて内心ハラハラしていた。あごに手を添え、首を捻るリーは少し可愛いかもしれない。再び、リーがあっ、と声を上げた。 「重要な事を思い出しました!この中忍選抜試験は三人一組なんですよ!四人一組は無理なはずです。――どうするんですか?」 サクラが声を上げると、リーの後ろから、先ほど幻術を掛けていた二人組みが立っていた。 「俺ははがねコテツ。こっちは神月イズモだ。さっきは悪かったな。でも、俺たちが言った事は嘘じゃない。――あぁ、それで話を戻すけど。俺たち実は二人だったんだ。あぶれた奴を仲間にしようと思っててな、そこが四人なら都合が良い。誰か一人来てくれると探す手間が省けるんだけど。」 えーっ、とナルトが声をあげたががもっともな事を言うと、頬を少し染めて視線を泳がせた。 「…って事で、いいかしら?私はよ。よろしくね、コテツ、イズモ。」 はナルト、サクラに手を振り、戻ってきたサスケとすれ違いさまに笑みを浮かべて三人から離れていった。 「第一関門はクリアってところだな。彼らがカカシとガイの秘蔵っ子って訳だ?」 イズモが心底嫌そうに言うものだからは苦笑してそんなことないよ、と否定した。 「Aとかの長期国外任務とかよりもよっぽどいいわよ?『子守』ってのも。」 うわー、とが嫌そうにいうとコテツとイズモは顔を見合わせて苦笑した。 「第一の試験はイビキさんが担当してるんだ。――うっかり落とされるなよ?」 三人は緊張した受験生らしからぬ和気藹々と三○一の教室をくぐった。 「俺達はイビキさん達に合流するけど、は受験生としてテストを受けてくれ。」 コテツとイズモは破顔して頷いた。 「あっ、。」 サクラがに気付き声をかけると、は苦笑しながら新人下忍の輪に入った。 「あ、お前忍者学校卒業式の日に居た…、」 頭に犬を乗っけた少年に続き、サスケの隣でサクラと睨み合っていた少女がに向かって言うと、は簡単に自己紹介をした後、注意した。新人下忍達は苦笑を浮かべる。少年も同じ様に苦笑してみせ薬師カブトだ、と名乗った。 「え…"薬師"?」 薬師という苗字には思わず反応してしまったが、すぐに何でもないという様子を装って差し出された手を軽く握り挨拶を交わした。カブトはにやり、と笑みを浮かべただけで、他の新人下忍達に向き直った。サクラがの傍に寄り、耳元で知り合い?と囁いたのではちょっとね、と曖昧に返事した。 「これは認識札。情報をチャクラで記号化して焼き付けているんだ。僕は四年掛けてこれを制作した。――見た目は真っ白なこのカードだけど…僕のチャクラを用いる事で――このとおり、今回の中忍試験の総受験者数と総参加国のグラフが見れる。」 はぎょっとしてサスケを見た。それは周りも同じで、とサスケの顔を交互に見ている。 「まずは我愛羅。他国の忍という事で情報が少ないんだけど…、それにしても下忍でAランク任務か、すごいな。――次に木の葉のロック・リー。この一年で体術が伸びてるな。他はてんで駄目みたいだけど。…最後に。彼女のは――。」 表示されたデータを見て、眼を疑ったのはだけでなく、サスケもだった。 「なんだ、サスケ君が気にしてたからどんな子かと思えば大したことないじゃーん。」 サクラの隣にいた髪の長い女の子が言う。それに同意するように犬を連れた男の子が頷き、他の子も態度に出さないだけで心の中ではそう思っているのかもしれない。カブトはにウィンクで目配せして、認識札を見せながら中忍試験について最後に一言付け足した。 「――と、まぁデータはこうなっているけど、みんな、各国から選りすぐられた下忍の中でもトップエリート達。そんなに甘いもんじゃないですよ、中忍選抜試験は。」 脅すように言うと、新人下忍達はいっせいに生唾を飲んだ。それを見て、カブトは言い過ぎたかなと、小さく息を吐いてフォローしようと口を開きかけたその時、ナルトは教室中に響き渡る声で叫んだ。 「俺の名はうずまきナルトだっ!てめーらには負けねぇぞっ!!」 新人下忍者達はいっせいに目を丸くし、他の受験生達はいっせいにギロリとナルト達を睨みつけた。 「!」 は思わず耳をふさいだ。キーンと甲高い音が軽い頭痛とめまいを引き起こす。が地面に崩れると日向家の少女がを支え、大丈夫?と声をかけた。同時にカブトも地面に崩れ、嘔吐する。 「か、カブトさん!大丈夫?!」 怒声と共に煙が教室前方であがり、その中から姿を現したのは、変化を解いて子供の姿から元の姿に戻ったコテツとイズモ、そして第一の試験監督である森乃イビキ率いる尋問・拷問部隊だった。
*20070320*
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