WIND
二つ並んだ墓標の前では静かに手を合わせた。 「どうか、安らかに…。再び生まれてくるときは忍などにならず、平和に暮らせるように…。」 は小さく呟いて、墓標に背を向けた。小さく紡ぎ出すメロディを鎮魂歌の代わりにした。 「姉ちゃんお帰り!」 イナリに笑顔で迎え入れられ、食事の準備をするツナミを手伝うためには台所へ向かった。 結局、それからさらに一週間後。すっかり元気になった木の葉の忍達は里に戻る事になった。最後にもう一度、とが進言し、ナルト、サスケ、サクラ、、カカシは再不斬、白の眠る墓標の前に立った。途中の花畑で花冠をつくり、それを二人の墓標にかけてやった。ナルトがお供えの饅頭を取ろうとしてサクラに手をたたかれ、それをサスケ、、カカシは笑った。 「ねぇ、カカシ先生?…忍の在り方って本当にこの二人が言ってたようなのかな?」 カカシはにこりと笑みを見せた。 「?」 歌いだしたの肩にカカシは優しく手を置いた。ナルト、サスケ、サクラもを振り返り、その歌声を聞く。透き通るような声に聞き惚れ、時間が止まっているような錯覚を覚えさせる。 「―――Coz you will hate yourself in the end...」 が歌い終わると、止まっていた時間がまた流れ出したように感じた。 「…お待たせっ!それじゃあ行こっか。」 今度こそ、五人は墓標に背を向けて歩き出した。 「お前達のおかげで橋も完成した。寂しくなるのぅ。」 誰が泣くものか!とイナリは反発したがその目すでに潤んでいる。ナルトも小さく肩が揺れてる事から涙をこらえてるんだろう。じゃ、とイナリに背中を向けた途端、涙と鼻水があふれ出た。サスケ、サクラ、もタズナ達にぺこりと頭を下げて木の葉の里がある方向へ歩き出す。カカシもまたお辞儀をして達の後ろを歩いた。 「よぉしっ!帰ったらイルカ先生に一楽のラーメンおごってもらって俺の勇姿を語るぞ〜!」 賑やかな三人を見て、とカカシは顔を見合わせて笑った。木の葉へ戻る道中は今まで体験した事のない感情を感じさせた。 ナルト、サスケ、サクラ、、カカシの五人は約一ヶ月ぶりに木の葉の里に戻ってきた。 「うーんっ!やっぱ里が一番安心できるってばよっ!」 ナルトの言葉を聞いて、は心の底があったまるような気がした。 「それじゃ、今日は此処で解散!ゆっくり休んで、調子を整えておけよ。」 サクラはいつものようにサスケを誘いだし、そのサクラにナルトは詰め寄る。――見事に切り捨てられていたが。とカカシはそんなナルトに苦笑して任務報告書提出の為、一緒に三代目火影・猿飛がいるところに向かおうとした。 「、待て。…俺に少し付き合え。」 サスケはから『忍レンジャー〜愛と友情の結晶〜』という名前が出て吃驚したが、すぐに平常心に戻して明日の約束をすると自宅の方角へ向かった。はサスケの背中に向かってごめんね!ともう一度言うと待ちきれないのか駆け出して家へ戻っていった。の意外な一面を見たのはナルト、サスケ、サクラだけではなく、カカシも初めてだったようでが忍レンジャーをねぇ、と意味深に呟いてナルトとサクラに手を振って分かれた。 翌日、は朝早くから慰霊碑の前に居た。一番始めに書かれているジロウの三文字を見つけ、は今泣きそうな表情で無理やり笑みを浮かべた。 「ジロウ…。私のこの能力は…一体何の為にあるの?」 おはよう、とカカシは返しての隣に立った。 「また、見てるんだな。」 は曖昧に笑った。実年齢はカカシより大きいが、見掛けの年は十二歳なのだ。あまり悟ったような事を言って訝しがられるのも困る。は久しぶりに付けた腕時計を見て、一度火影邸へ戻ろうと決める。 「それじゃあ、私戻るね。任務の時、朝早くから此処に来るなら遅刻しないで集合場所に来たら良いのに。」 カカシは笑って手をひらひらと振った。は今生きていることを確かめるように一歩ずつ地を踏みしめてその場を後にした。 「ごめん、待った?」 あの二人は上手く気配を消して隠れていたつもりだろうが、やはりバレバレだった。 「上手く、撒けたようだな。」 二人は下忍と認められたあの演習場の近くで腰を下ろした。 「サスケの言うとおり、私はもう下忍ではない。この里の忍の強さで言うのなら上忍クラス…と言ったところかな。下忍をしてるのはある任務の為よ。内容は話せないけど火影様直々に頼まれてる。」 サスケが目を丸くし、を見つめて呟いたのを、は少し悲しげに微笑んだ。 「波の国でカカシが言ったように、私の忍としての動きは全て一族の当主、ザイチのもの。――"木の葉三強"は有名でしょ?あなたの一族も、その木の葉三強の一つだもの。」 その名を聞いて、サスケははっとした。少し喋りすぎた、というようにバツの悪い表情をしての視線から逃げるように顔を逸らす。 「…本当、彼は凄い人だわ。だけど、それ以上に悲しい人でもあると思う。勝手な私の意見だけどね。――サスケが彼を憎む気持ちを私は解ってるつもりよ、同じ生き残りとしてね。でも、復讐は何ももたらしてはくれない。成し遂げた先にあるものは――ただの"虚無"よ。」 サスケは思い切りの睨み付けた。それを正面から受け止め、は儚げに微笑む。 「今は…解らなくていいよ。でもきっと、解る日が来るって信じてる。――話はこれだけよね?それじゃあ、私は帰るわ。木ノ葉丸に忍術教えてあげる約束しているの。」 は立ち上がり、軽く砂を払う。 「待て!――俺に、俺にも、」 今にも泣きそうな切なげな声にサスケは何も言えずただを見つめるしか出来なかった。はおへその辺りを軽く撫でた後、サスケに向かって笑みを見せ、また明日。と言って歩き出した。の姿が見えなくなるまでサスケはその場所を動けずにずっと見据えていて、ぎゅっと拳を握り締めた。 「俺に、どう生きろと…?!アイツを憎む事で生きて、強さを求めた俺に…!」 その答えを出すのはサスケ自身。
*20061125*
途中引用した歌詞…By AKEBOSHI/♪WIND
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