「スザクを、助けなければ。」 大きく息を吐きながら、疲れたようにルルーシュはベッドに腰を下ろした。そこへ、死んだはずだった少女が部屋へ入ってきた。 「…どこへ行っていた?」 ぐ、とルルーシュは黙る。少女はを見て昨日は名前すら教えなかったな、と話し出した。 「私はC.C.という。私の事はそう呼べ、・。」 はこれ以上聞いてもイタチごっこにしかならないと、はぁと息を吐いて問い詰めるのを止めた。それよりも、スザクだ。 「ねぇ、ジェレミア卿って知ってる?」 は悪戯を思いついたかのように笑った。それを訝しげにルルーシュは睨みつける。そこへC.C.が助け舟を出したのか、ルルーシュの逆燐に触れる為なのか、どちらとも取れる発言をした。 「いいじゃないか、に任せておけば。お前と違って、は守れる力を持ってるぞ。それにあの"力"もあるしな。」 部屋の温度が二、三度下がったのは気のせいではないはずだ。 「…そんなの、私が知りたいよ…。どうして、人は殺しあわねばならない?」 殆ど音にならないように呟く。それにはっとしたかのようには顔を上げ、舞台の上にいる校長を見据えて再び呟いた。 「そうよ、大切な人を殺された、その悲しみを殺した者に報復する為よ。」 の周りには他の学生もいたが彼らはみな、意識を校長に向けていての呟きは聞こえていなかった。斜め前にいたルルーシュだけがその音を拾い、肩越しにを見据えていた。 「ルッル〜シュっ!なぁなぁ、午後はどうする?授業もなくなったし、前から頼まれていたコ・レ、でも?」 校長の長い話から解放された学生達は私語を楽しみながら各々が向かう場所へ歩いていく。ルルーシュもリヴァルとシャーリーと談笑しながらひとまず生徒会室があるクラブハウスへと向かって歩いていた。は三人の後ろを静かに歩いていた。何かを考えるように手を顎に当てたり、口元に添えたり、とそわそわしていた。 「、どうかしたか?」 ルルーシュが声をかけると、続いてルヴァルもちゃん、どうかしたの?と声をかけてきた。声をかけられるまで自分はぼうっとしてたのか、と自覚するとすっかりこの生活に馴染んでしまっている事にも気付かされた。軍人として、失格だ。 「ううん、なんでもない。ちょっとぼうっとしてたみたい。」 前にいたはずのシャーリーがわざわざの下までやってきて顔を覗き込んでいた。無駄な心配をかけてしまったな、とは申し訳なく思い、なんでもなかったように繕った。なら、いいけど。とが作った笑みにつられまだ心配そうにしていたシャーリーも笑顔を作った。 「あ、来た来たぁ。待ってたのよ〜。」 ルルーシュはリヴァルにだけ聞こえるように顔を近づけ、惚れた弱みだろ?と茶化すと生徒会室を出て行った。はこの後の予定は何も無いからいいか、と席に着き、書類を一枚とって目を通した。簡単な入力作業だ。が着席したのを見て、ミレイはに近寄り豊満な胸にの頭を抱え込んだ。 「は良い子ねぇ〜!」 突然のことに思わずの声がひっくり返ると、どこからか笑い声が聞こえてきた。最近、突然のことに対する反応速度が落ちている気がする…。は反省した。 「さ、リヴァル、シャーリー席に着いた着いた!」 ミレイから解放されてはほぅ、と息をついた。シャーリーにくすっと笑われ、頬を薄く赤に染めた。リヴァルの冗談をミレイは軽く流してさぁ、やるわよぉ、ガァツッ!!と気合を入れたのを合図に全員がパソコンを起動させた。 「…ってば、処理がすごい早いね…。」 を除く四人が、作業の手を止めて凝然とを見つめていた。いったん集中すると周りが見えないのか、は四人の手が止まり、見られていることにすら気がついていないようだ。の手元と画面を横からシャーリーとリヴァルが覗き込み、向かいに座っていたミレイとニーナがの背後から画面を覗き込んだ。とんでもない速さで流れる画面は、もはや言葉の羅列が自動でスクロールされているようにしか見えない。 「これで終わりっと。」 最後の書類を打ち込み、はタンっとエンターキーを押してファイルを保存し、更新した。確認の為もう一度最初から見直すが誤字脱字は無い。小さく息を吐いて、ようやくは四人がの周りでを見ていたことに気がついた。 「うわ!み、みんな…、どうしたの?」 いつの間にかを中心に集まっていたことに対してびっくりし、変な悲鳴を上げてしまった。こんな醜態、ディアッカ達の前で晒せない。ほとほと、自分は反応速度が鈍っている、と再自覚させられた。 「…。」 ミレイに呼ばれ、は何かまずい事でもしただろうかと不安になった。みんな早く帰りたいのだろうな、と思い少しでも早く終らせる為に殆ど一人でやってしまったのだ、もしかして、怒らせてしまった? 「す、すごいわ!あなたはこのアッシュフォード学園にいなくてはならない人だわっ!!あぁ、どうしてもっと早くこの学園に来てくれなかったの?!」 手を握り締めるミレイ、目を輝かすリヴァル、横から抱きしめてくるシャーリーに、最後の頼み!とが見据えた先には、頬を染めて敬愛する人を見るような眼差しでニーナに見つめられ、は絶句した。誰か助けて〜、と心の中で叫ぶとタイミングを見計らったかのように生徒会室のドアが開いた。立っていたのはこの学園の生徒会副会長。 「…何を、やってるんだ?」 この時ばかりはルルーシュが救世主に見えた。 「早くドアを閉めろ。――あぁ、言っておくがお前が考えているような事実はないからな、誤解するなよ。」 ルルーシュは睨みつけるようにC.C.を見据えた。彼女はそんな視線もお構いなしにピザをほお張ってご満悦だ。話を聞くと、四六時中ピザをほお張っているらしい。…それであのスレンダーな身体つき…羨ましい。 「今日の16時、旧東京タワーでレジスタンスと会う。と初めて会ったあのシンジュクゲットーで動かした奴らだ。」 が言いながらソファに腰掛ける。そこへC.C.がそういえば、と話に入ってきた。 「も確かエースだな。ヒルドだったか、機体の名前は。」 もう一度息を吐いて、はC.C.からルルーシュへと視線を移した。彼は二人が話している内容に耳を傾けつつも準備をしていたらしい。 「、私服に着替えろ。旧東京タワーに行ってもらう。」 やれやれ、とは腰をあげて自室へ向かった。 「展望ラウンジにあるインフォメーションカウンターに彼女の名前を出して預けて欲しい。後はまっすぐここへ戻っていろ。俺が彼らに昨夜の作戦を話す。」 ルルーシュはいつものようにニヒルに笑って見せた。
|