シャーリーとリヴァルに連れられ、向かった先はクラブハウスの一室だった。中へ入ると眼鏡をかけ、黒髪をおさげにした少女と、肩まであるブロンドの髪のエプロンをつけた少女が地面とお見合いしている。

 「…何してるんですか、会長。ニーナも。」
 「あらぁ、いいところへ来たわねっ!ニーナの実験データを保存したマイクロチップが落ちたらしくてねぇ。さ、手伝った、手伝った!――っと、その子が・クラインさんね?」
 「あ、はい。初めまして、・クラインです。」
 「そんな畏まらなくていいわよ!気楽にね。私は生徒会長のミレイよ。ミレイ・アッシュフォード。よろしくね、。黒髪をおさげにしてるのがニーナ・アインシュタイン。」
 「ニーナです…。よ、よろしく。」

 よろしく、とはニーナに向かって微笑んだ。
 それから、全員でチップを探し始めた。ミレイは準備があるから、あとは頼んだ!といって出て行ってしまった。部屋の中を随分探したが、それらしき物は見当たらない。もしかしたら、廊下を歩いてる時に落としたのかもしれないな、とは一応、という気持ちで何気なく廊下を見回した。

 「あ、あった。ニーナ、あったよ。これでしょ?」
 「はい!それです、実験データ。」
 「やれやれ。腰が痛てぇ。」
 「よかったね、ニーナ。」
 「はい、皆さんありがとう御座います。」
 「そっち見つかったぁ?こっちも準備できたよぉ〜っと!」

 生徒会室の下は大きなホールになっていた。ホールの窓際に、ルルーシュと赤い髪の少女――カレン・シュタットフェルトが目を見開いてミレイを見据えている。

 「会長、これは…、」
 「あれぇ?知ってて連れてきてくれたんじゃないの?今からカレンさんとの歓迎会するから。」
 「歓迎会…?どうして、私の、」
 「おじいちゃんに頼まれてねぇ。カレンさん、身体弱いでしょ。普通の部活動は無理だろうから生徒会に〜って。あ、私生徒会長のミレイよ。よろしくね。」

 ミレイが料理を運んできたのを二階から見ていたシャーリー、リヴァルは和ァイ、と喜びながら下に降り、その二人の態度にとニーナは顔を見合わせて苦笑した。二人に続くように階段をおり、ミレイが自己紹介したのをきっかけに、シャーリーから自己紹介していった。はもう一度自己紹介したほうがいいのかな、と悩んでいると、カレンの方から自己紹介してきた。

 「カレン・シュタットフェルトです。よろしく、クラインさん。」
 「こちらこそ、シュタットフェルトさん。私の事はでいいわ。」
 「そう?私も名前でいいわ。姓、長いでしょ。」

 実はちょっと咬みそうだったの、とこっそりとカレンに告げるとしっかり笑われてしまった。

 「シャーリーさん、これ机においてくれませんか?」
 「ありがと、ナナちゃん。」
 「ナナリー?お前まで、」
 「ルルーシュの妹よ。」
 「私は中等部なので、生徒会のメンバーじゃ無いのですが…。」
 「いいでしょ、準会員ってことで。」

 リヴァルの言葉にうん、とルルーシュ、カレン、以外が頷いて、テーブルの周りに集まった。

 「さぁて、乾杯といきますか!」
 「あー!シャンパン!!」
 「生徒会自らお酒はちょっと…、」

 気にしない、気にしないとリヴァルは気楽にいうが、シャーリーがだめ!といってリヴァルからシャンパンボトルを奪おうとしたが、それは宙に投げ出され、ルルーシュの手の中に落ち着いた。そのやり取りを、は懐かしく感じながら見守っていると、抜けそうだったシャンパンのコルクが抜け、勢いよくカレンに向かってとんだ。それを目の前で薙ぎ払ったカレンを目撃して、は目を見開く。身体が弱い女の子が、勢いよく飛んでくるコルクの蓋を払いのける事が出来るのか?やろうと思えば動体視力が必要だし、とっさの反射神経もいるだろう。

 「「あ…、」」

 呟く声にはっとして、カレンを見ると、振られていたシャンパンの中味はカレンの頭から降り注いでいた。
 その後、ミレイとシャーリーがカレンをシャワールームへ連れて行き、リヴァルはホールの端で正座させられており、ルルーシュは咲世子さんに着替えとタオルを用意してもらえるように頼みに行った。

 「さん、ごめんなさい、とんでもない歓迎会になってしまって。」
 「私は気にしてないよ。カレンが災難だったけどね。」

 申し訳なさそうにナナリーが声をかけてきたのではそれを苦笑で返した。なんて、なんて平和な一時だろう。
 しばらくして、ミレイとシャーリーが戻ってきた。

 「あれ、ルルーシュはまだ?」
 「まだ戻ってきてないですよ。」
 「二人が戻ってくるまでとりあえずテレビでも見よっか。」

 ミレイの提案に、はぁいと返事を返してリヴァル、シャーリー、ニーナが隣の部屋へ移動した。しばらくして、彼らは大画面のテレビを転がして来た。コンセントを繋いで、リヴァルが電源を入れると、画面には公園で出会ったジェレミア卿と呼ばれた男が映し出されていた。

 「―――エリア11総督にして、神聖ブリタニア帝国第三皇子のクロヴィス殿下は崩御された。イレヴンとの戦いの中で、平和と正義の為に、殉死されたのだ!」

 えぇ?!と以外のその場にいた全員が声を上げた。そこへ、ルルーシュとカレンが戻ってくる。

 「お兄様、大変!」
 「なんだい?」
 「クロヴィス殿下が亡くなったのよ。」
 「暗殺されたんだってさ!」

 ルルーシュもカレンも息を呑んだのが解った。

 『たった今、新しいニュースが入りました!容疑者らしき男が捕まったとの事です。逮捕されたのは名誉ブリタニア人の枢木スザク一等兵。元イレヴンの、枢木スザクです。』
 「この人が、犯人?優しそうな顔してるのに…。」
 「人は見かけによらないってね。それよりさぁ、会長?歓迎会…どうします?もうそんな雰囲気じゃないですよね。」
 「そ、そうね…。クロヴィス殿下の事もあるし。、カレンごめんなさい。」

 いいえ、ととカレンの声が重なった。結局殆ど手付かずのミレイの手料理を下げ、みんなで後片付けをしているとき、ルルーシュはの手首を強引に掴んでホールから外へ出た。

 「どういうことだ?!」
 「だから、言ったまんまよ。彼が、誤って拘束されたの!」
 「何故、もっと早く言わなかったんだ!」
 「何度も言おうとしたわよっ!でも、昨夜は彼女のことがあったし、今朝は今朝で話せなかったじゃない!…どうしてそこまで、彼に執着するの?私は、彼によくしてもらったから、彼を助けたいと思ったけれど、本来、別の犯人を仕立て上げられた方がルルーシュにとっては得じゃないの?」
 「…本来であれば、だ。彼は、俺の友達だ。」

 ルルーシュの言葉に、は息を呑んだ。友達、彼と、ルルーシュが。

 「う、そ…。」
 「嘘じゃない。とにかく、早く片付けて自室で話そう。」

 ルルーシュが何事も無かったかのようにホールへ戻り、リヴァルにどこいってたんだよ、と軽く責められているのを聞きながら、はその場所からなかなか動くことが出来なかった。

 

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