と一緒に出雲にある家の屋敷から夜空を見上げていた。
 周りを山で囲まれたこの場所は都市の光を寄せ付けず、星が良く見えて心地がいい。現代に生きる人たちは、精霊に感謝を、星に道標を求めることを、すっかり忘れてしまっている。は悲しいね、と呟きながら沢山の星を見つめていた。

 今夜は新月で月明かりもなく、街頭もない山道を歩くのは少し困難だ。しかし、その子供は迷う事無くまっすぐに歩み続ける。マントをかぶり、黒い長髪を風にたなびかせて、"星"を身に着けている。

 「…。」

 自分に言い聞かせるように子供は呟いた。

 『どうした?』
 「呼ばれた?―――ううん、きっと空耳だね。」

 は気にしてないフリを装ったが、視線はある一点を見据えている。

 「…ちょっと行って来る。はここに居てね。しばらくしても戻ってきそうになかったら迎えに来て。」

 は自分ではそれほどとも思っていないが、かなりの方向音痴だ。未だに自身の屋敷でも迷子になることがある。
 にそう告げて、は闇に消えた。

 

 「…。」

 ―――僕はここに居るよ、ようやく君に会える。子供は嬉しさを抑えきれずに少し大きめの声での名前を呼ぶ。五百年ぶりの彼女。五百年前も千年前もあと少しというところで彼女を手に入れることが出来なかった。力不足だった自身の過失。だが、今度こそ。

 「。」
 「あれ?君、どうしたの?迷子?」

 子供は顔を綻ばせた。これほどうれしい事はない。彼女が自らこの場所に来た。

 「。」
 「なんで私の名前知ってるの?あぁ、そっか。お祖父ちゃんが有名だからかな?君の名前は?」
 「ハオ。」

 子供――ハオは簡潔に名前を告げた。はハオ、と一度名前を呼んでにこりと笑みを浮かべる。

 「ハオはどうしたの?お家は?」
 「に会いに来た。」
 「私に?」

 はなんで、と続けて質問したがハオは、と繰り返すだけだ。じれったくなって、はだから?と少し声を荒げた。するとハオは少し悲しそうな表情になった。

 「僕の事、覚えてない…?」
 「え?初めてじゃないの?」

 ハオは肩を落として息を吐いたが、そうか、と呟いてに近づいた。は首をかしげて記憶を遡る。ハオとどこであっただろう?つい先日までイギリスに滞在していた時には一つ年下の子としかほとんど遊ばなかったし同じ年代の子供に出会う事も無かった。日本でははいつも一人で話しかけてきてくれる子もいない。ましてや誰もの名前を呼ばなかった。
 いよいよは解らなくなって、ごめんね。と呟くと、ハオはいいよといって、笑みを見せた。綺麗な笑みに思わずの頬が高潮する。

 「これをに渡したくて来たんだ。」

 ハオは綺麗に包装された包みをに差し出した。おそるおそるそれを受け取ると、ハオは突然空中に浮かぶ。は思わずきゃ、と声を上げた。

 「それを着て、僕に会いに来て、。待ってるからね。」
 「え、えぇ?」

 ハオはもう一度に微笑んで空を見上げて呟いた。

 

こんなにも夜空が

綺麗だなんて。

(空に消えた少年はまるで太陽に晒された星だ。)

 

 

 

*20061021*

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ハオ様、ハオ様!これじゃあ変人ですよ、ただの自己満ですよ!(汗