REGINLEIF
暑い、と思った。 コズミック・イラ73.10.2。 「レイ・ザ・バレル!OS解析はまだなのか!」 その声にギョッとして周りの兵士が声の主に視線を向けた。呼ばれた本人はこうなることを予測していたのだうか?驚いた様子もなく、静かに振り返った。 「やはり、教官でしたか。」 とレイの様子をみて周りの兵士からクスクスと声が聞こえると、は急に恥ずかしくなって近くの兵士を真っ赤な顔で睨み付けた。―――真っ赤な顔で睨まれても怖くないぞ、とその場にいた整備隊長が豪快に笑いながら言うと、はべーっ、と舌を見せた。 「教官明日の進水式に出席なさるのですか?」 任務、と聞いてレイが眉を寄せた。 「ほら、護衛よ。ご・え・い。最高評議会議長ギルバート・デュランダルの。」 は片目をつむってにっこりと笑う。ふわりと、とレイの髪を風が乱した。 「あっ、ごめんねレイ、もうじき到着なさるみたいだから行くわ。」 はすでにレイから少し離れたところにいる。周りの喧騒も手伝って声が聞こえにくいが、伝えたいことだけ伝えると、は駆け出していった。 『レイ!次に会うときはよ!教官なんて呼んだら…。覚悟しなさいね!』 レイはもう本人には聞こえないが、しっかりと返事した。
バリバリと空気を裂く音を鳴らすヘリコプターから一人の男性が降りてきた。四人の従者の中心にいる男性が、プラント最高評議会のデュランダル議長だ。 「遠路、お疲れ様です!」 はデュランダルに敬礼して、二、三言葉を交わすと、デュランダルの三歩後ろを歩いた。だが四人の従者、もといと同じ議長護衛の人たちはの分のスペースを作っただけで、動こうとしない。は不思議に思って首をひねった。それを見たデュランダルがクスクス笑って、に言った。 「君の力を疑っているわけではないが、備えあれば憂いなし、というじゃないか。」 が顔を紅潮させてわたわたしたのをデュランダルはにこりと微笑み、よろしく頼むよと一言言って前を向いた。は穴があったらそこに今すぐ駆け込みたい気持ちになった。の両脇に立っていた従者がぷ、と噴出し、それをごまかすように二度咳をした。 建物はすぐ目の前だというのに、デュランダルがふいに立ち止まった。不思議に思っては顔色を伺う。 「、君はここまで出いい。」 デュランダルが心苦しそうに表情を歪めたので、何か言おうと開きかけた口は無意味にパクパク動かしただけで、何も言葉にしなかった。しぶしぶうなづいたに満足してデュランダルは大きく頷くとまた後程、といって中に入っていってしまった。 「だーかーらーそこはこうだって!こんな並びじゃ見た目が悪いしやりにくいってば!」 なんて、みんな生き生きしてるんだろう。はぼぅっと式典の準備に急ぐ兵士たちを眺めながら息を吐いた。 「あの、・さんですよね?」 は不思議そうに二人の女性兵士を見た。二人の表情は緊張と期待が混じったような困ったような顔でを見据えていた。 「私たち、あなたに憧れて軍に志願したんです!ここでお会いできるなんて光栄です!」 は困って曖昧に笑った。自分は人に尊敬されるようなことはしていないし、先の戦争終盤でメディアに出たのは、前代表議長パトリック・ザラの命令だった。ラクスも、裏切りたくてプラントを裏切ったのではないし、そもそも、最初から裏切ってはいない。誤った情報が彼女たちに記憶されていて、は泣きたくなった。 「握手していただいていいですか?」 右手を差し出して、彼女たちが代わる代わる握っていくと、ありがとうございました、と言って持ち場に戻っていった。
自分の機体、フォルセティが収容されているドッグに立ち寄り、整備士達に状態を聞いては腕時計を見た。―――基地を見て回っていただく予定なのだ。デュランダルがそういったのを思い出し、近くを通っているかもしれないとは整備士達に声をかけてドッグを出た。アーモリー1ザフト軍用基地には多くのオーブ移住者がいる。停戦条約を結びんでいたとしても、プラントにナチュラルはいないので、彼らももちろんコーディネイターだ。 耳が痺れる様な警報が鳴り響き、進水式を迎えるというお祭り気分は一変した。兵士たちは銃を握りなおし、整備士達は急いで確認を済ませるとパイロット達をコクピットに誘導した。 「六番ハンガーだ!機体が奪取された!」 六番ハンガーと聞いて、の脳裏に新しくロールアウトされる三機を思い出した。機体名は確か―――。 「カオス、ガイア、アビス!!」 が叫ぶのと、その三機が現れたのは同時だ。地面を強くけって、はフォルセティが収容さえているドッグに飛び込んだ。 「―――出れる?!」 了解、と軽く敬礼してコーディネイターならではの運動能力でフォルセティのコクピットに身を滑らせた。 「フォルセティ、発進します!早く避難して下さいねっ!」 スラスターを踏んで、の機体フォルセティはドッグの屋根を突き破って偽りの大空に飛び出した。 『!』 了解、と返事が返ってきてはトリガーを引いた。紙一重でカオスは避ける。 「そこのザク早く離脱して下さい!」 は敵が片腕のないザクから注意をそらさせる為、ライフルを挑発するように打ち込んだ。ザクからの返事はないが、息を飲むのが微かに聞こえた気がした。 「…強奪部隊なら、外に母艦がいるわねっ!」 二機が空へと飛び上がると、もすかさず空へ飛び上がった。 『!』 は二人の機体を確認すると、すばやく捕獲の指示を出した。しかし、今この現状をみれば捕獲が難しいのは手に取るようにわかる。 「外に出すと、次に何が起こるか…ここで止めるのよ!」 二人は散開して、敵に攻撃する。敵パイロットの腕もなかなかのようで攻撃ひとつかすらない。 『なんて奴等だ!奪った機体でこうまで…!』 は攻撃に注意しつつ後方を振り返った。シン、レイの後ろから黒い煙を上げ、ルアの紅いザクウォーリアが速度を落としていく。は反転して、ルナのザクウォーリアに並び補助した。 「シン、レイ!後は任せるわよ!」 はシンとレイに頼んだわよ、と声を掛けてルナマリアの機体を支えながらミネルバへ降り立った。 「エイブスさん、ルナの機体よろしくね!私、艦橋に行ってきます!」 は整備隊長であるマッド・エイブスに声をかけ、一目散に艦橋目指して飛び出していった。 「失礼します!グラディス艦ちょ…デュランダル議長?!」 は目を丸くして艦橋の入り口に棒のように突っ立った。何か物言いたげに口をパクパクさせるばかりでその声が出てこない。議長は目を細めて口元を緩め、に席を勧めた。 「、突っ立っていないで座りなさい。これからミネルバは彼らを追って発進する。」 はデュランダルの言葉に驚いて声を上げ、ミネルバの画面に映ったインパルス、ブレイズザクファントムがプラントの外に出て行ってしまったのを見て再び声を上げた。バカ!と声を上げたがったが、デュランダル議長に、グラディス艦長、トライン副長もいたのでぎゅっと口を結んで進められた席に腰を下ろした。
*20060531 加筆訂正*
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