Reginleif
#Present9
『グッレイトォ!』
『まだだ!もっと細かく砕かないと…!』
敵の襲撃を受けながらも、破砕作業は進んでいった。
地表に当たるように攻撃していたこともあって、ユニウスセブンは徐々にだが、確実に破砕されている。
漸く真二つに割れたが、プラントは大きい。は崩れゆく大地を見ながら、過去に思いを馳せた。
―――お父様、お母様…。
はレバーを握る手に力を込めた。
こんな私を…許してくれるよね…。
『早く、次の作業に移るぞ!』
イザークの回線を通して怒鳴る声が、を我に返させた。
一瞬遅れて目前に動く物が映る。反射的にフォルセティを向けた。
『これ以上はやらせん!!』
ビームソードを振りかざし、ザフト製のモビルスーツが襲い掛かってきていた。
『我らのこの墓標…落として焼かねば、世界は変わらぬ!!』
「?!」
は無線から聞こえてきた言葉に、心を鷲掴みにされた。口ぶりから、"血のバレンタイン"で大切な人を喪った人なのだろう。
───────っ!!
強い思念がに伝わり、脳裏にフラッシュバックを引き起こす。
―――笑顔、少女の声、大きな手、優しい瞳…。
断片的に"見える"思いに、は軽く頭痛を覚えた。
しかし、ここで彼らの攻撃を受けるわけにはいかない。 はビームライフルの照準を合わせ、その機体を撃墜した。
同時に頭痛も治まるが、見てしまった申し訳なさと、知ってしまった切なさが、眩暈を生み出した。
然程もなく"ピッ"とアラームがして、画面にテキストで伝達が入る。意識を戻し、伝達を確認した。
「ミネルバは・・・このまま大気圏突入?!そんな、」
『く、機体が重い…っ!』
『限界高度かっ!後はミネルバに任せるしかない!ジュール隊離脱するぞ!』
、とイザークに呼ばれ、は後ろ髪ひかれる思いで機体を反転させた。
…が、ふと視界に入って来たザク。 たった一機でメテオブレイカーを起動させようとしている。
「アスラン?」
『?!君は早く帰還しろ。』
「何を言ってるのよ!手伝うわ!」
ザクはアスランだった。
は再び機体を反転させ、バーニアを吹かせる。
が、イザークの機体、スラッシュザクファントムに掴まれ、進めなくなってしまった。
「イザーク!離して!」
『何を言っている!お前はプラントに一度戻らないといけないだろう?!』
「議長には、私が、」
『お前はまた無益な争いを起こさせたいのか?!お前の言葉で回避出来るかもしれないのに、それを投げ出すというのか!』
「でも…っ、」
イザークの言葉に、はうろたえた。ユニウスセブンは、、イザークからどんどん離れて行く。
『、君は一度戻ることになっているのか?』
アスランの顔が見れるならば、少し眉を寄せた悲しげな表情が見られただろう声に、彼との通信が開かれたままだったことを思い出した。
「あ、え、うん…。」
『そうか…。イザークの言うとおりだと、俺も思う。が止める事が出来るのなら、そうしてくれないか?』
アスランの言葉に、はうん、としか言えなかった。 そこへ、爆発のノイズが割り込だ。
『やらせはせんぞ…っ!!』
『!!さっきのっ?!』
「アスラン!」
『、いい加減戻るぞ!』
再びバーニアを吹かしたを諫めて、イザークが機体を反転させた。
そこへと入れ替わるようにシンが搭乗するインパルスがザクを援護した。
『何故…何故気付かぬ?!我等コーディネイターにとってパトリック・ザラが執った道こそ、唯一正しきものと!!』
はっと、その叫びを聞いた全員が息を呑んだのが解った。
手が震える。その場に居た人全ての強い"思い"が脳裏を駆け巡っていった。
イザークの呼ぶ声が聞こえるが、それもどこか遠くのことにしか思えず、ひどい頭痛に呼吸が荒くなる。
痛みを抑えようと押し付ける手はヘルメット越しだということも忘れ、散らない痛みに顔をゆがめた。
どれほど力強く押さえつけても痛みは紛れない。
「…っはっ…あっ…っ、」
過呼吸が続き、意識も朦朧とし始める。
かはっ、という空気を吐き出す音が自身に響き余計に症状を増していく。
そんな最中、ふと、ユニウスセブンを視界に入れる。目に映った小さな光。
赤い炎をあげ、の故郷は飛散した。
「お、父様…お母様…、 」
『…?!』
はそれだけ呟いて、意識を暗転させた。
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+++Writer えりゅ&らび 25/10/05