Reginleif
#Present8
フォルセティに搭乗してまもなくのこと。
突然ブリッジから回線が開かれた。
『出撃前にすまないね、。』
正面のディスプレイに映ったのはデュランダル議長。
「議長!どうかなさったのですか?」
『作業前にすまないね。君にはこの破砕作業後、私と一緒に一度プラントに戻って欲しいのだよ。
恐らく、地球で今回の件について何らかの反応が見られると思う。何も無いことに越したことは無いんだが…。
つまり君には、プラントの混乱を防ぐため、もう一度舞台に上がって欲しい。
以前交わした約束を、こんな形で破ることになってしまうが…。』
―――舞台?
確かに大戦終盤、ラクスの後任の様な形で、プラントの市民や兵に向けてメッセージをメディアに託したことがあった。
戦後も、市民を励ます為に、と言われ舞台に立ったがそれが最後だった。
―――…議長は何を私に求めている?
「?!お言葉は最もですけれども…ですが議長…、私はミネルバのクルーとして…、」
上手く言うことは出来無い。
それでも、またいつの間にか偽りを、矛盾を纏った言葉を提示してしまうのではないかという危惧があった。
もちろん今の姿勢を持ち続ける自信がないわけではないが・・・、自分の発する言葉の力に怯えた時期も少なからずあったから。
『、私は許可します。こちらも大事ですけど、議長の仰った様に混乱を防ぐ為にも行くべきだわ。』
「グラディス艦長…。わかりました、艦長がそう仰るのなら従うまでです。」
『後で時間を取るから。作業、御願いね。』
「はい」
回線を切って、は息を吐いた。
破砕作業がすばやく終われば、アスラン、カガリも今は破砕作業に向かっている迎えの艦へ移るだろう。
そうすれば、また話す時間があるかもしれない…。
アナウンスの指示通り、レイとルナマリアのザクが発進位置についた。
続いてのフォルセティにも発進の連絡が入り、それを聞いてヘルメットのバイザーを下ろす。
その時、メイリンの緊迫した声がスピーカーを通して艦全体に響き渡った。
『現在、先行しているジュール隊がアンノウンと交戦中!援護せよとの事です!
総員、対艦、対モビルスーツ装備に切り替えてください!』
「?!イザーク達…、」
はレバーを握る手に力を込めた。
シンが先に発進し、続いてレイ、ルナマリアが発進すると、次はの番だ。
『フォルセティ、発進、どうぞ!』
「フォルセティ、発進します!」
パワーを入れると、灰色だった機体は白色になって宇宙を駆けた。
ミネルバから最後のザクが射出される。搭乗者はもちろん、アスランだ。
『、モビルスーツの指揮、任せるわね。』
「了解!」
ブリッジからの通信に短い返答で返すと、続いてインパルス、ザク、に回線を開く。
「出来るだけ戦闘は避け、ユニウスセブンの破壊を第一に動いてね!
戦場では常に冷静に…、感情に身を任せたら、自身を滅ぼすわよ!」
『『『了解!』』』
シン、レイ、ルナマリアの三人から元気よい声が返ってきた。
しかし、アーモリーワンで強奪されたカオス、ガイア、アビスの三機を見つけると、そちらとの戦闘を開始させてしまう。
「あぁ、もう!」
は悪態吐く。予想はしていたが、何事も思う通りにいかないものだ。
『、気をつけろよ。』
「アスランもね。…いくよ!一機でも多くのメテオブレイカーを起動させなきゃ、このまま地球へ衝突しちゃうわ。」
『あぁ!』
どちらにせよあの3機を放置したままでは、破砕作業に支障がでるだろう。
この際あれらはシン達に任せて、アスランと二人ジュール隊の援護に向かおう、とはアスランとバーニアを吹かした。
アンノウン…部隊は依然判明していないが、ザフト製のモビルスーツ同士が戦闘を行っている。
「援護するわ!」
『援護する!』
とアスランがそこへ飛び込むと、敵は一瞬怯んだようだ。
距離を取って介入してきた新手を見分する相手を威嚇しながら、二体のモビルスーツを後ろに庇った。
『なっ!?!…と、アスラン?!』
『何ぃ?!貴様達が何故此処にいるっ!!』
「今は戦闘中よっイザーク!話は後!!」
『…俺はおまけか、ディアッカ…。』
久し振りに元クルーゼ隊の四人がそろった。ここに、二人足りない事は今更、どうしようもないことだ。
アスランとイザークの喧嘩腰の会話が、無線を通して聞こえてくる。
は思わず、ぷ、と噴出した。
『素直じゃないよなぁ、あいつら。』
「本当に…。きっと、一番再会を喜んでいるはずなのにね。」
ディアッカに聞かれていた様だ。
は照準を合わせ、敵モビルスーツに向かいトリガーを引いた。
敵はの攻撃を読んでいたのか、あっさりと交わす。
だが、交わした方向にディアッカのライフルが向けられており、敵が飛び込んできた瞬間、爆発した。
『…わっ、本っ当怖いったらありゃしねーな、の戦術は。敵が操られてるみたいだぜ。』
「あら、私何にも言ってないわよ、ディアッカ。」
『が照準合わせたら俺は避けた敵を狙うって、昔の戦法。』
「覚えてたの?」
『忘れたくても、無理だな。まぁ、この戦法、中・長距離型の武器を持つモビルスーツとタッグ組まなきゃ戦果はないだろうけど。』
『おい!右!』
『一機倒したからってぼけっとするな!いい的だぞ!ディアッカ貴様もさっさと持ち場に着け!!』
がライフルを撃ち、それを避けた敵をディアッカが攻撃する、というのはクルーゼ隊にいた時、が考えた事だった。
右、とアスランに言われ、はビームライフルを打つ。軌跡は敵の武器を爆発させた。
流石はザフト製のモビルスーツ、と言って良いだろう。
なかなか決着はつかず、破砕作業は大分遅れている。
おまけに、アーモリーワンで強奪された三機とも未だ交戦中で。は舌打ちした。
『イザーク、左っ!』
『わかっている!いちいち指図するなっ民間人がっ!!』
『やれやれ…。』
「…本当、変わってないわね。」
それにしても、とはふと思った。
強奪された三機が、何故ユニウスセブンに現れたのだろう。は照準を敵に合わせながら考える。
彼らが地球軍だったならば、ここでの戦闘は双方にとって、無意味な事だ。お互いにいらない犠牲を出す必要は無くなるのに…。
墜ち行く機体を視界の端に移しながら、またトリガーを引いた。
コックピットに致命的な損害を与えない様にと攻撃を加えるが、は焦っていた。
いくら武器を奪っても、四肢を撃っても、なおも向かってくる敵機。ただのテロリストの仕業ではないような気がしてくる。
落下するユニウスセブン───。
破砕作業を遮るモビルスーツ───。
ボギーワンの介入───。
最初は、連合側がミネルバをユニウスセブンに誘い込み、落下するコロニーと同じ画面に収めることで開戦のきっかけにしようとしているのかと思った。
でも…モビルスーツはザフト製のものだった…。
先ほど頭に浮かんだ流れが、妙な程現実に当て嵌まりすぎて怖い。
「それが本当なら……、そんなのってないじゃない」
の呟きを拾う者は居なかった。
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+++Writer えりゅ&らび 16/10/05