Reginleif
#Present7
「…。」
「あ、ごめんアスラン。議長に破砕作業の支援、頼みに行くところだったよね?」
アスランの戸惑いが伝わる。気まずい空気を変えようとは目尻に溜まった涙を拭い、話を切り替えた。
「一緒に…行こうか?」
「…いや、これは俺自身の思いだから自分で言いに言ってくるよ。こそ、部屋に戻る途中だったんじゃないのか?」
「あ、うん。でももういいの。今からアラートに行くわ。ユニウスセブンもう直ぐだから…。」
「え?」
「今のミネルバの速さなら後十分く『ユニウスセブン到着まで約十分。パイロットはアラートにて待機して下さい。』
…ほらね?」
アナウンスが時間が差し迫っている事を伝える。
アスラン、早く行っておいで、とはアスランの背を押す。
後ろ髪ひかれる思いでアスランは一度を振り返り、ブリッジの方向へ歩き出すと、も急いでアラートに向かった。
はパイロットスーツに着替ると、アラートから見えるモビルスーツを眺めていた。
今は灰色の巨体。一度起動させるとそれは殺戮を行う兵器にしかならない。
―――フォルセティ…"和解"と言う名前の機体で、地球・プラント両者の和解の象徴を崩すなんてね…。
なんて皮肉。とは小さく呟いた。
その時、アラートの扉が開く。パイロットスーツに身を包んだアスランが立っていた。
「許可、下りたんだね。」
「あぁ、議長が特別にって…。なんか皮肉だな。
先の大戦の条約締結の場所がユニウスセブンだっていうのに、それを破砕するとなると…プラント側が一方的に条約破棄しているみたいだ。」
「そうだね…。」
同じ事を考えていた…。は心が満たされていくのを感じた。
再びアラートの扉が開く。赤服のままのシンとレイが立っていた。アスランが居る事にシンは眉を寄せる。
「なんであなたがそんなモノを着ているんですか?!」
「…破砕作業に参加させてもらう。」
「どういうことです?あなたはミネルバのパイロットじゃないでしょう?」
「…議長が彼に許可を出したのよ。シンも彼の話は聞いたことがあるんでしょう?」
「…!…ふんっ!」
「あれぇ?"アレックス"さんも作業支援ですか?頼もしいですね!!」
鼻を鳴らしてアスランの横を通り過ぎたシンと入れ違いにルナマリアがアラートに入ってきた。
は小さく溜息をついた。
アカデミーの時から彼らを知っているが、当時と全く変わらない。
良い事かもしれないが、"軍"という一つの団体で動く時自分勝手な行動は、自身を、仲間を破滅へと向かわせる。
はアカデミーでそうゆう事を含め、教えてきたつもりだが、いまいち伝わっていないようだった。
「教官は"フォルセティ"で出られるんですか?」
「えぇ…。ねぇ?前から聞こうと思ってたんだけど、ルナもメイリン達もどうして私の事を教官って呼ぶの?
確かに以前は、教壇に立ってたけど、今は同じミネルバのパイロットでしょ?
教官、って呼ばれると、壁を作られてるみたいで…。」
「え?ってことは、好きに呼んでも良いってことですか?!」
「もちろんよ。それに、言葉遣いも…。私達、一つしか歳も違わないでしょ?」
「本当に?!ずっとそう呼びたかったの!、これからも宜しくね!」
「ルナマリア、」
「何よ、レイ。さっきの話聞いたでしょ?…っとこんなにはしゃいでたら駄目だわ!じゃ、破砕作業がんばろうね!」
「レイも…。教官って呼ぶの止めてね。」
「わかりました、。」
ルナマリアとレイがロッカールームへ向かうとアラートには再びとアスランだけになった。
「ごめんね、アスラン。シンがあんな態度とって。」
「いや、彼の態度も頷ける。気にしていないよ。…それより、ずいぶん慕われているんだな。妬けるよ。」
「ア、アスラン!なんでもないのよ。ただアカデミーの時教壇に立ったって言うだけで…。それに、終戦間際はラクスの代わりとしてメディアに出てたでしょう?」
「そう、か…。にはいろいろと迷惑掛けたな。」
「ううん。気にしてない。例えあんな形だったとしても、私は嬉しかった。
対の遺伝子を持っているのはラクスじゃなくて、私だという事を知ってもらえて…。」
不謹慎だね、とは苦笑した。
今から客観的に当時の自分を見返せば、なんて愚かで浅はかだったんだろう。
周りは生きるか死ぬかの立場に立たされていると言うのに、自分は一人の人に想いを告げたい、という事ばかり考えていたのだから。
アスランの瞳と、の瞳が重なる。
「俺も、あの時初めてそれを知って、正直嬉しかった。ラクスの事は好きだけど、恋愛感情は無かったんだ…。
必死に好きになろうと思ってた。けど、その時脳裏を過ぎるのはいつもだった。
偶像崇拝に近いラクスと、傍に居て一緒に戦う。…俺は、いつの間にかが好きになっていた。
もちろん、今も…。こんな風に再開するとは思ってなかったけどな。」
「同感。」
二人の表情に笑みが浮かんだ。
「そろそろ、機体で待機してようか…。」
「そうだな…。」
ヘルメットを握りなおして、アスランが先にカタパルトの方へと動いた。
その後を追うようにが勢いよく駆け出して、アスランの頬へとキスを送る。そのままアスランを追い越して振り向いた。
不意打ちに吃驚し、わずかに紅潮したアスランの表情には声を上げて笑う。
「?!」
「あはは、変な顔!」
「!…よぉし。」
強く踏み出したアスランの一歩は二人の距離を一気に縮めた。
ヘルメットを持っている手とは逆の手で、強くを引き付け、そして感じる柔らかさと温もり。
ほんの僅かな時間触れ合って、二人は離れた。
「…仕返し、だ。」
「…こんな時に…、ずるい。」
は頬を紅潮させ、悪戯が成功した子供のような笑みを見せるアスランに軽く拳をぶつけた。
『パイロットはコクピットにて待機。ユニウスセブンまでまもなくです。』
アナウンスが入り、二人は顔を見合わせて頷いた。
落としたくなく無い気持ちは一緒だった。―――地球に。そして、本当はユニウスセブン自体を…。
は、地球にいる彼女を思った。その為に、溢れ出る涙を必死に押し留める。
「ごめんなさい、お父様、お母様。いままで…ありがとう。」
小さく呟いた言葉はアスランにも届く。ギュッとヘルメットを握る手に力が入った。
「母上…。」
アスランの呟きはに届く事無く虚空に消えた。
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+++Writer えりゅ 10 10 05