Reginleif
#Present6




















…。」
「ア、スラン…。」

は雷に打たれたかの様にその場に立ち尽くした。
彼らがアーモリーワンでの出来事に巻き込まれ、ミネルバに搭乗していた事は知っていた。
恐らく、彼らもどこかでがミネルバの搭乗員だという事を知ったのだろう。
は来た道を戻ろうと踵を返したが、アスランによって阻まれる。

!待ってくれ、」

アスランがの手を握って、その動きを止めた。
の胸が跳ねた。温かい。久しぶりにそう感じた。
背けた顔をアスランに向ける。あの髪も、瞳も全てが二年前と同じだった。変わった所といえば、少しばかり身長が伸びた所だろうか…。 次の瞬間には強い力で引っ張られ、気付いた時は腕の中に居た。
押し付けられた男らしい胸板から、規則正しい鼓動が聞こえる。

「会、いたかった、ずっと…!!」
「アスラン…、」

はアスランの背に手を伸ばしかけたが、止めた。今の自分にはそんな資格など無い。
ぎゅっとを抱きしめる手に力が籠められる。少しばかり息苦しさを感じたが、どうでも良かった。

―――今はアスランの事しか考えられない…。

の閉じられた瞳から涙が一筋零れた。




「す、すまない。」
「ううん。」

アスランがを解放したのはしばらくしてからだった。
通路を誰かが通る気配がして慌てて二人は離れた。
アレックス・ディノと名乗っているアスランにとって、正体がばれるのは良いとは言えない。
…が、それもずいぶん早くばれてしまったらしい。カガリが思わず本名を呼んでしまったそうだ。
それを聞いて、は笑う。

「カガリらしいね。あの子、直ぐ顔に出るタイプだから解り易い。…あれ?そのカガリは?」
「笑い事じゃないぞ、おかげでこっちは肝を冷やしっぱなしだ。…あぁ、カガリは今部屋で眠っている。さっきクルーと一騒動あってな。」
「アスランもお人好しね。苦労ばっかだと、危ないぞ。…そう。ひと騒動ってもしかして、シンって呼ばれてる子と揉めたんじゃない?」

ここ、と言っては笑いながら生え際を指差す。その意図に気付いたアスランはコツンとの頭を小突いた。

「ああ、そう呼ばれていたな。オーブからの移住者らしいが…。それより、聞いたか?ユニウスセブンの事…。」
「あ、うん…。さっきブリッジで。破砕作業に出るらしいわ、ミネルバは。ごめんね、いろいろと巻き込んじゃって。」
「いや、気にしなくて良い。この事はプラントもだが、地球にとっても一大事なんだ。それで…」
「ん?」
「…今から、破砕作業の援護に出させてもらえないか、頼んでくるつもりなんだ。」
「なっ?!何でアスラン、そんなことしたら、」
が言いたいことは解ってる。けど、この状況をただ黙ってみていることなど出来ないんだ!」

ユニウスセブンを地球に落とせば、壊滅は免れない。

「そう…よね。地球にはラクスもキラも・・・大勢の人たちも住んでいるもの。欠片も落とせないものね。」

声はだんだんと小さくなり、アスランを見ていられなくった顔を下へと伏せた。
ぎゅっとスカートを握る拳に力が入る。
アスランはそれを解く様に優しく包んだ。

、さっき俺とぶつかった時、何を考えていたんだ?出来れば話して欲しい。話せないのならそれでもいいが…。」

アスランが、の瞳を覗き込んだ。 こんな場で彼に言うような内容ではないとも思ったが、真剣な彼の瞳が言葉を促させる。

「もう、忘れなくちゃいけないと思ってるんだけど、お父様やお母様の事…」

小さく語り始めたの頭を、アスランが無言で撫でる。彼の大きな手のひらがとても優しい。

「一年前、私とラクスが、アークエンジェルに拾われたときのこと覚えてる?」
「あぁ、あの時の事…。」
「その時、アークエンジェルは崩壊したヘリオポリスの避難民を搭乗させていたの。
 補給も完了していない不完全な状態だったらしいし、通常以上にいろいろと備品が必要って。特に水…。
 彼らはデブリ帯から補給を考えて、そこで水を運良く発見したの。
 ―――それがユニウスセブンの水。
 私たちが乗ったポッドはキラに拾われて、アークエンジェルに収容されたわ。
 ラクスは危険を顧みず、ポッドを飛び出すし、正体をばらすし大変だったけど。」

は苦笑した。アスランも、彼女らしいな、といって破顔した。

「私達の身元が発覚した時、アークエンジェルはまだ作業の途中だったわ。
 それで…私は無理を承知で作業の援助を申し出たの。
 もちろん許可は下りなくて、でもキラが庇ってくれたお陰でなんとか援助の許可を取れた。
 ―――けど、本当は作業の手伝いなんてしなかった。私は途中抜け出してお父様とお母様を探したわ…。
 見覚えがある場所だと思ったら、家の敷地だったから。
 ぼろぼろの扉を開けたら、顔見知りの使用人達が浮いていて。
 中央奥がリビングで、お父様はよくそこで寛ぐのが好きな人だった。
 恐る恐る、扉を開けて、驚愕したわ。
 そこにはやっぱりお父様がいて、お母様がいたの。お父様の…手に…会社の新製品が握られていて…。」

は言葉を切った。溢れくる涙を止める事が出来ず、頬に幾つもの光の筋が出来ていた。
アスランは優しくそれらを拭ってやる。

「死ぬ間際まで、お父様はお父様で、嬉しかった。けど、悲しかった。
 あの時はこんなことをした本当にナチュラルが憎かった。ナチュラルの全てを滅ぼしてやりたかった。
 けど、そんな事しても喪ったものは還ってこない…。」

そうだな、とアスランも小さく同意した。

「…破砕なんて、本当はしたくないの。」

この言葉がの心からの思いだった。
の頬に添えられたアスランの手が強張ったのを感じた。
















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+++Writer えりゅ 8/10/05