今日は『たんじょうび』という日だ。
神子等が言うには『けーき』を囲んで『ぷれぜんと』を渡すとのこと。私は貰う側らしい。



『たんじょうび』というのは、生まれてきた日にその事を祝う祝儀と聞いた。そして今、目の前には多数の菓子が広げられている。

「ちょっと〜、ヤスアキ〜〜。ちゃんと食べなさいよ〜〜!!」
「そうらよ、ヤスアキが主役なんらからな!」

酒など呑んでいないはずのハーマイオニーとロンがいやにからんでくる。
どうしろというのだろうか。
ハーマイオニーには切り分けられたケーキの乗ったお皿を押しつけられ、ロンには瓶詰めの飲み物を何本も勧められ。いつしか私の前のには、皿と瓶の壁が造りあげられていた。
私はちらりと神子の方を見る。神子は私が処遇に戸惑っていることをわかっていたのだろう、目が合うやいなや二人をやんわり引き離してくれた。

「ちょっと、二人とも!バタービールはノンアルコールって言っても擬似酔い出来るよう作られてるんだから、飲み過ぎは駄目だよ?二人で窓際行って涼んできたら?」

集まっていた瓶と菓子をテーブルにまんべんなく拡散させると、神子は私の横に座った。
仄かに胸がざわめいた。

「泰明さん、お誕生日おめでとうございます!」

神子も少し酔っているのだろう。僅かに上気した頬が、薄桃に染まっている。

「神子・・・・」
「こういうときは“ありがとう”って言うんですよ」
「有り難い」
「そんな難しい顔でじゃなくって、ほら、こうですよ」

そう言って神子は、取り違えただろう私にありがとうですよ、と笑みを向けた。



神子は私の感情をだれよりも拾ってくれる。
お師匠の下で過ごしていたときは、一人でいることが常であった。
ただお師匠一人は私をよくわかっていたと思う。が、それは理解というものではなく把握。

八葉となってからは、私を解するものが増えたのだと思う。
最初はそれがわからず、介入されることに不快感を覚えたりもした。しかし、今では頼りになる『仲間』なのだと言えるだろう。

そして、ここホグワーツ。
まだ会って間もない者達ばかりだが、親しく接する人間が増えた。
すれ違いざまに言葉を交わし、学について意見を交わしたりもする。

だが、この私に感情をいうものを、心というものを与えてくれた少女は、私自身気付かない何かを私の中から見つけ、差し出してくれる。
理を曲げて産まれた私を、同じ人間だと言って受け入れてくれた最初の人。
人形だった私を人間にした人。
慕うべき人。

「泰明さん?泰明さんってば!」

今回、私が呼ばれたことは私にとって喜ばしいことでもあった。
神子が側に居るのならば、どこでだろうとそこは私の居場所に。
私の温かな場所──────。



神子を見たままぼんやりとしていた焦点を合わせ直すと、不思議そうな顔で見上げる神子の顔があった。

「大丈夫ですか?」

問題ない、といつもの通りに返す。が、やはり神子にはかなわない。また何かを難しく考えていたんじゃないですか?と言われ、言葉に詰まった私に「図星ですね?」と念を押されてしまった。

「いや、問題ない」

神子・・・・・・

「神子」
「はい、なんですか?」
「ありがとう」

これは祝儀への礼ではない。
神子への祝詞(ことば)。

なにがあろうと、この笑みを向けてくれる隣の少女を守り続けてみせる。
あいつは、『それは使命だ』と言った。あのときはそうだったかもしれない。が、気付いた今は違う。
使命であったときと同じものだとしても、今のそれは幸せ。

言って、体重を神子へと少し傾けた。




えっと・・・遅くなりましたが、泰明さん誕生日記念!!
一応バースデーパーティーやってますが、殆ど無視ですな(笑
とりあえず、神子←泰明をプッシュで書きたかっただけ(> <)
後編ありです。
                                  2005.10.01up